みのりさんが完成した料理をテーブルに運んでくれた。
近所のスーパーで買ったセール品のステーキ肉が、良い感じに焼かれていた。特別な時のために、冷凍庫の中でずっと調理されるのを待っていたお肉。まさか彼女の初めての手料理に使われるとは思ってもいなかったはず。
そんなことよりも、圧倒的存在感を放つモヤシの姿がそこにはあった。
なんというか、『赤い悪魔』がそこにいた。
モヤシは、本来『萌やし』と言われるように、もっと柔らかいイメージがあったはず。
この眼前にあるのは、『萌やし』という言葉の対局にある、『禍々しいナニカ』であることは間違いなかった。
カモ『え…みのりさん…これボウルのまま出てきているんですけど…??』
みのり『今から、とりわけますね(*´∀`*)』
みのりさんが、トングのようなものでモヤシを混ぜながら、お皿にとってくれる。
皿の上に盛られても、その禍々しい物体は異様な雰囲気を醸し出していた。
本来、主役であるべきはずの肉が、このモヤシによって完全に飲まれていた。
カモ『これ…色がすごいですね…』
みのり『赤くてきれいでしょ♪♪』
カモ 『えっ』
それ以上何も言えなかった。撲〇して出来た血だまりを見て、『赤くてきれい♪』って喜ぶサイコキラーを連想したとか口が裂けても言えなかった。
目の前にある、そびえ立つ真っ赤なモヤシの山。
なぜかわからないけど、突然頭にこんな映像が浮かんだ。
と…とりあえず食べることにしよう。
カモ『これ…食べて大丈夫なやつなんですよね??』
みのり『何言ってるんですかwww当たり前じゃないですか(*´∀`*)』
恐る恐る真っ赤なモヤシを口に運ぶ。
なに…これ…
カモ 『うまっ!!!!』
食べてみると意外とおいしいっ!!
タレに浸かって、しなっていると思いきや、シャキシャキとした歯ごたえが口の中いっぱいに広がる。一味のピリッとした辛さのパンチの中にニンニクの風味がしっかりと生きている。
そしてこれは…何だ??
このふわっと香る、さわやかな香ばしさは…??
カモ 『おのれっ!!このカモネギ先生の味覚と嗅覚を試そうと言うのかっ!!』
みのり『正解ですっ!!っていうか思いっきりゴマ見えてますけど…』
悔しいけど、美味しかった。
止まらない。肉よりも、モヤシが美味しいなんて…
悔しい…ビクンビクンッ!!
気がつくと、モヤシの魔力に惹かれ、ひたすらモヤシを食べ続けていた。
モヤシの海で溺れていた、いや、違う!!
むしろ私はモヤシの草原を歩くナウシカだった。
ランランララランランラン〜♪
ユパ様〜モヤシが豊作ですじゃーー!!
多分3袋分ぐらい食べた気がする。
みのり『喜んでもらえて良かったです♪』
カモ 『これ、一体何の料理なんですか?』
みのり『一風堂っていうラーメン屋さんにおいてあるモヤシなんですよ(*^o^*)』
カモ 『えっ…』
みのり『美味しかったのでネットで調べたら作り方が書いてあって!!実際に作ってみたらすごく美味しくてハマったんですよっ!!』
カモ 『ラーメン屋さんの…モヤシ…だと…っていうかパクry』
みのり『あまりにも美味しかったので、気がついたらモヤシ生活していました(´∀`*)ウフフ』
カモ 『そうなんですか…確かにこれは美味しいですね…』
どうしてこの子は、初めての彼氏への手料理に、一風堂のモヤシで勝負することにしたんだろう…。やっぱりどっかものすごく変わってる人なのでは…色んな意味で大丈夫なのかな…
とか思いながモヤシを食べ続けたせいでお腹がいっぱいになってきた。
ボウルの中のモヤシはほとんどなくなっていた。
カモ 『ごちそうさまでした』
みのり『おそまつさまでした(*´∀`*)』
カモ(悪魔)『なにはともあれ…先が思いやられるな…』
カモ(天使)『それは言っちゃだめっ!!彼氏への手料理がモヤシと彼氏宅で現地調達の肉だけなんてあまりにもひどいよ… (´;ω;`)ブワッ』
カモ 『で…でも、美味しかったことには変わりないし、それに…僕は楽しかったからっ!!』
ご飯を食べ終わって、そんな葛藤をしながら食器をキッチンに運んだ。
色々思うことはあったけど、でも一つ自身を持って言えること、それはこうやって大好きな人と同じ空間で、同じご飯を食べるってすごく幸せだった。
そう、次の瞬間までは…。
みのりさんと目が合う。みのりさんはニコッと笑ってゆっくりと口を開いた。
みのり『もやしを追加していったらいいです』
カモ 『えっ…』
みのり『まだ調味料も余っていますし、しばらくモヤシだけで行けますよっ!!』
カモ 『えっ…この子、何言ってるん…??』
みのり『もやしだけで、しばらく食いつなげますよ、そのためにこんなにもやし買ってきたんです♪♪』
カモ(悪魔)『あかん、この子の目、真っ黒なソウルジェムになっとる!!』
カモ(天使)『ダメッ…この子すでに魔女よっ!!』
みのりさんは、目の焦点を合わせないままこちらを見つめて笑っていた。
カモ 『えっ…さすがに…もやし中心の食生活は死んでしまいませんかね…』
みのり『いけますって!!』
何その自信満々な表情っ!?ドヤ顔にもほどがあるだろっ!?可愛いけどもっ!!
カモ 『いやいやいやいやいやっ!!行けますっていうかどうみても逝けますでしょっ!!!』
みのり『大丈夫ですよっ!!ほらっ…ご飯もありますし…』
カモ 『あかんって…栄養失調になっちゃうって…』
みのりさんが、にこって笑った。目の前に、近くにみのりさんの顔が来た。
みのり『点滴って栄養補給できるんですよね?』
ビーフリードォォオオオオっ!!!!!!(商品名)
カモ『いやいやいやいやいやいや!!点滴ってそういう使い方するものじゃないからっ!!ウィダーインゼリーみたいな感覚でやらないからっ!!』
みのり『頑張って与信回復させましょうっ!!』
カモ(悪魔)『ダメや…この子、全然聞いてない…』
カモ(天使)『主は仰ったわ、悪は滅びぬ、何度でも蘇るって…』
そうして、この日から与信を回復させるための『もやしプロジェクト』が開催されることとなった。
ちなみに、モヤシの原料である『大豆』の花言葉は、
『必ず来る幸せ』、『可能性は無限大』、『親睦』だそうです。
ちなみに今のかもねぎ先生の現状は、
『必ず来るしわ寄せ』、『ローンは無限大』、『絶望』です。
コメント
ってかさ、全く料理もできん子って設定だけど肉はちゃんと焼けたのな?それこそ焼き具合とか難しいものがあるはずだが。
あと、「一風堂」って入れたら「一風堂 もやし」がかなり上位で出てきたけどカモ先生のせいか?
面白いけど、ここは何のサイトなんだろう笑