#-13. 2度目のセンター試験

書類を書くカモ

去年受験した場所と同じ会場、XX大学。

現役生、浪人生、そして自分のようなよくわからない人間が一同に集う。ちょうど一年前…去年の自分は、始めてハンター試験の会場にたどり着くことが出来たニコルのような状態だった。

ニコル

だけど今年は違う!!

 昨年の…国語120点(6割)という屈辱を果たすために、1年間を捧げた。ほぼ国語に捧げたと言ってもいいくらい頑張った。苦手意識があった数学、地理についてもほぼ万全の状態に仕上げてきた。

 センター試験受験会場の入り口には、毎年受験生の家族や後輩、そして予備校講師達が立ち、受験生を励まし戦場へと送り出していた。センター試験の恒例行事とも言える。私が受験する会場だった大学の校門前にも、去年と同様たくさんの人で混み合っていた。

 K予備校の先生も何人か来ていた。浪人生に囲まれて少し華やかな雰囲気に見えた。その華やかな集団の中には、同じ教室で勉強したクラスメイトの姿もあったけど、自分はその中に入ることが出来なかった。2年間、予備校生活でも浮いていた自分だったので去年と同様、入り口の前をそっと素通りしようと思った。

 コートのポケットに手を突っ込み、歩き出そうとした瞬間、校門のちょっと外側の壁にもたれかかってタバコを吸っている、センスの悪い茶色の色が入ったサングラスをした、スーツ姿のゲーリー先生が目に入った。

ゲーリ『おいwww素通りすんなwww』

カモ 『いや、ちょっと変出者かと思って…先生、あの中には入らなくて良いんですか?』

私は華やかな輪の方を指して言った。

ゲーリー先生は優しく笑い、口から白い息を吐きながら言った。

ゲーリ『俺はこういうイベントは嫌いだからな。今日はたまたま朝早く起きてしまったから…ついでにお前をからかってやろうかと思ってな来ただけw』

カモ 『ついでwwwwついでなのにわざわざスーツwwww

ゲーリー先生は ていが悪そうに笑った。

ゲーリー先生は、ツンデレだった。2年間自分の勉強に付き合ってもらった。本当にいい人。服のセンスは悪いけど。

カモ 『先生…なんかすごく緊張してるんですけど!!』

ゲーリ『えっ!?今さらっ!?』

カモ 『だって2年間ですよっ!!』

死ぬ気で積み重ねた2年間。何回も泣いたし、泣き言も言った。

ふがいなくて、悔しくて自分の体を傷つけたこともあった。

そんな2年間の答えを出しにいく。

ゲーリ『地獄を2回も経験したんだ、今のお前は何だって楽しめる。楽しんでこい!!』

そう言ってダサいサングラスを外して自分を見送るゲーリーは、とても優しく見えた。

使い続けたボロボロの暗記ノートを見ながら試験会場に入った。

1年ぶりの試験会場、教室に入ると現役生が多いせいか、教室の中はにぎやかだった。問題を言い合う女子学生、『俺昨日寝過ぎたわー』と地獄のミサワのような男子学生、必死にノートを見直す自分と同じくらいの受験生…。

自分の座席を見つけ、机の上にカバンを置いた時、急に緊張感が襲ってきて、全身に武者震いのような感覚に襲われた。机の板が眼前に迫ってきた。周りのみんなが急に自分より賢く思えた、そして自分を見下してくるような気がした。制服姿の学生も、自分のことを馬鹿にしているような気がした。

『場違いなのがいるよ』『また落ちるって』『もうあきらめたらいいのにね』『受験料もったいない』『医学部とか無理でしょ』

逃げ出したい、今すぐここから逃げ出したいと思った。

去年は何も感じなかったのに。

ペンケースから鉛筆を取りだそうと思っときに、音が消えた。

もうダメかもしれないと思った。

ゲーリー『だから、楽しめってwww』

ふっと顔を上げると、教室の広い空間。

誰も自分のことを見ていない。静かな空気。

楽しむ…か。そうだ、もうここまで来たら楽しむしかない!!

ゲーリーの言葉を何度も思い出しながら、机に座ったままゆっくり深呼吸をした。高ぶっていた気持ちも徐々に落ち着いてきた。

武者震いが完全に治まった頃に、試験官が教室に入ってきた。そして長い説明と問題用紙とマークシートの配布が行われた。

問題用紙とマークシートが机の上に置かれてから数分、2年間の苦労が走馬燈のように過ぎるかと思ったが意外に心は穏やかだった。少しワクワクしていた。

1教科目、『地理』が始まる。

『それでは、始めて下さい』

試験官の声と同時に、一斉に問題用紙をめくる紙の音が教室に響いた。

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