#37.福岡アパート(決済編その1)

ごろ寝するカモ

土曜日の朝、カモは怯えていた。

そう、今日は午後から福岡のアパートの決済がある日。

白鳥が来るっ!!

白鳥『自分はみのりが好きです。』

そう宣言されてから、1ヶ月以上の時間が過ぎていたが、今も白鳥の言葉が頭を過ぎる。

カモ(白鳥め・・・絶対にみのりさんに会えるからって喜んでくるんだろうな…。)

顔を洗って、スーツに着替えているとみのりさんから電話があった。

みのり『おはようございます、カモ先生、朝ですよ!!』

カモ 『起きてます。今日はやっと福岡の物件の決済ですからね。』

みのり『色々ありましたけど、やっと完了ですよ!!』

カモ 『本当…色々ありましたね…(遠い目』

みのり『カモ先生、朝ご飯食べました?』

カモ 『まだですよ、パンでも食べようとしていた所です。』

みのり『良かったら、朝ご飯、一緒にしませんか?』

カモ 『今からですか?』

みのり『はいっ!!私の行きつけのお店があるんですよっ!!』

みのりさんは、いつも急に提案して無理矢理私を連れて行く。

だから私の借金は1億を超えてしまっているのかな

病院と家の往復ばかりの人生を変えてくれてきた。

カモ 『わかりました、すぐに準備して出ますね』

みのり『忘れ物したらダメですよww』

カモ 『了解っ!!』

お財布、携帯、判子、通帳、住民票をカバンに詰めこんだ。

以前、お薬説明会でもらった手提げカバン(薄い布っぽい素材)で、書類を運んでいたら、

みのり『ちゃんとしたカバンを使ってください、大事な書類なんですから!!』

と怒られて、一緒に買いに行ったカバン。いつも不動産取引の時に使っているこの相棒も、擦り傷や凹みで味わい深いものになっていた。一番目立つキズは、みのりさんにローキックで蹴られた凹みですけど…orz

勢いよく玄関を開けると、朝日が眩しくて、視界よりも初夏の風のにおいがした。

不動産投資 と巡り会わなかったら、今も休日はゴロゴロして怠惰な一日を過ごしていただろう。

不動産投資と巡り会ったおかげで、みのりさんと出逢えたおかげで、こうやって充実?した日々が過ごせている。

取引がない日も、与信回復のため、借金返済のため当直のバイトに明け暮れている。

あれ?これはむしろマイナス要素なのでは…。

深く考えるのはやめよう、

『充実した日々を過ごせている』、そう自己暗示をしながら街へと出かけた。

みのりさんと街の商店街の入り口で待ち合わせたので、商店街までトボトボと歩いて行き、商店街の入り口にある偉い人の石像のようなものに寄りかかってみのりさんを待っていた。

『カモせんせー!!』

遠くからみのりさんの呼ぶ声が聞こえてきた。

スーツ姿のみのりさんが小走りで近づいてくる。

みのり『お待たせしましたっ!!』

カモ 『あれ?今日は何か雰囲気が違いますね…。』

みのり『今日は待ちに待った決済なので、勝負服で着ちゃいましたよっ!!』

普段よりも、ピシっとした黒のスーツ姿。

新人OL風ではなく、落ち着いたキャリアウーマンのような印象だった。

カモ 『じゃ…じゃあ今日は下着も勝負下g』

みのり『そんなわけないじゃないですかっ!!下着はいつも通りですっ!!』

みのりさんが持っていたカバンで僕をバンバン殴る。

殴られている短い間に、

カモ(みのりさんの普通の下着ってどんなのだろう…。)

と、カモは幸せ思考に浸っていった。

カモ 『そういえば、今日の下着は何色なんですか?』

みのり『今日はですね…って言うわけないじゃないですか!!変なこと言ってないで早く行きますよっ!!』

惜しかった。

商店街の裏通り、みのりさんを視姦しながら歩いていたら、

5分くらいでみのりさん行きつけの喫茶店に着いた。

やや古めの雑居ビルの2階に入っているお店。ギリギリ旧耐震かな…。

喫茶店の中は お世辞にも、お洒落とは言えないような…。

カウンターとテーブル席が2つあるのみで、古くて、こぢんまりとした印象だった。

ボサノヴァのような音楽がかかり、おばちゃんとお婆ちゃんの間のような、物静かな、でもどこか威圧感のある、まるでヨランダのような雰囲気の女性がコーヒーを焙煎していた。

シスターヨランダ

店内には老夫婦が1組テーブル席に座り、カウンターの端では中年くらいの男性が日経新聞を読んでいた。カウンターに座り、みのりさんは店員と思われるヨランダ婆さんにトーストセットを2つ頼んだ。

みのり『ここのトーストセット、すごく美味しいんですからっ!!』

みのりさんは、メニュー表をパラパラとめくり、変わりがないかを確かめているようだった。

ヨランダ『おやまぁ…。みのりちゃんが社長以外の男性と来るなんて珍しいw』

目の前にヨランダが登場し、お水とおしぼりをカウンターの前に置いた。

みのり『おばちゃん、余計なこと言わないでくださいw今日はこれからお仕事なんですから!!』

ついつい、これから決済だと言うことを忘れていた。

今日もまた、デートと勘違いしていた。

店内は古い調度品のせいか、はたまた穏やかなBGMのせいか、時間がゆっくりと止まり昭和から平成に移行出来ていないかのような雰囲気だった。

カモ 『ここ、昔からやっているんですか?』

ヨランダ 『そうよ、みのりちゃんが生まれる ずっと前からw』

カモ 『そんなに前から…』

気になることがあったので、ヨランダがパンを焼きに行ったタイミングでみのりさんに聞いてみた。

カモ 『ここの喫茶店ってそんなに儲かってないように見えますが…。』

みのり『そうです…地主ですよっ!!。この近所にも いっぱいビル持ってますよ!!』

カモ 『やっぱりwwww』

こうした、ビルのテナントに入っている全然売れていなさそうな、でも全然潰れる気配のないお店は、大概地主だった。

みのり『せっかくだから、カモ先生も顔覚えてもらって、仲良くなりましょっ!!』

カモ 『その作戦、採用!!』

ヨランダ 『出来ましたよ』

気配を消して近づいてきたヨランダにビックリした。

みのりさんとカモの前に焼きたてのトーストサンドと、コーヒー、サラダが置かれた。

ママレードジャムがたくさん塗り込まれたトーストサンド。

久しぶりに食べるママレード。

『甘くて苦い…まるで不動産投資みたい…』とママレードボーイもびっくりなフレーズが思い浮かんだが、実際は自分の不動産投資は、ほぼ苦みしかない状態だった、ゴーヤボーイかな??

ヨランダ 『これから取引かい?』

みのり『そうなんです!!いつもこのカモ先生に買ってもらってるんですよ!!』

ヨランダ 『おやまぁ…みのりちゃんに搾取されてるんだね』

みのり『人聞きの悪いことを言わないでくださいwwちゃんと良い物件をオススメしてますよっ!!』

カモ 『え…いつも何かしら訳あり物件なような気が…痛っ!!』

みのりさんがカウンターの下で足をガンガン蹴ってくる。

余計な事は言わないでおこうと思った。

ゆっくりと朝食を食べた後、コーヒーを飲みながら思った。

不動産投資を始める前は、まさかこんな怪しげなお店(失礼)で、コーヒーを飲みながらガッキー似の人と楽しくワイワイすることなんて想像してなかったな…。

借金は多額に膨らんでいたが、それ以上にみのりさんは自分の人生を膨らませてくれていた。(股間も膨らませてくれt)

みのり『じゃあ、行きますかっ!!』

カモ 『出陣ですね!!』

支店長、ニーガン、白鳥が、決済の場である銀行で待ち受けている。

ヨランダ『また、いつでもおいで』

ヨランダは、カウンター越しにニコリと笑って優しく見送ってくれた。

みのり『今回の取引は、既定路線なのでほぼ問題ないと思いますが、一応確認しておきましょう。』

カモ 『了解です。』

これから始まる、決済に向けてみのりさんと銀行に向かった。

これが当面、最後の取引になるかもしれない(与信的な意味で)。

そう思うと、これからみのりさんと一緒に過ごす特別な時間が愛おしく思えてきた。

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