#19.カモ vs 白鳥(ラウンド2)

白鳥とカモ

ホテルの上層階にある、見晴らしの良いカフェに移動した。

今度、みのりさんとお茶をしようと思って考えていた場所。

晴れていたこともあって、景色は最高だった。

街の景色が眼下に広がる。

よりによって、白鳥(福岡の不動産担当♂)と二人で来るとは…。

店内に入ると、一番奥の席に案内された。

お洒落なカフェに場違いな男が二人、

どうみても『午後のお茶を楽しみに来ました』という雰囲気ではなかった。

座席に座ると、ウェイトレスからメニューを手渡された。

メニューを見る男が二人。春のクレープフェアをしていた。

メニューに夢中な白鳥。クレープを必死で選んでいた。

白鳥と目が合った。どうやら彼は注文が決まったらしい。

カモ『で…なんでこの組み合わせなんですか?』

白鳥『1回カモ先生と二人で話したかったんですよ。』

カモ『実は僕も聞きたいことがあって…。』

白鳥『多分、私たちの知りたいことは一致していると思うけどね』

カモ・白鳥『みのり(さん)のこと!!』

ウェイトレスが注文を聞きに来る。

自分は春のオススメクレープセットを頼んだ。

白鳥も、自分と同じものを頼んだ。

カモ『白鳥さん、甘い物も食べるんですね。』

白鳥『時代はスイーツですよ、カモ先生。』

たわいもない会話をする。

そして、カモはさりげなく、会話を戻す。

カモ『っていうか、白鳥さん、結婚してますよね?なんでそんなにみのりさんにこだわるんですか?』

一瞬、間が空いた。

白鳥はそのイケメンな顔でカモを見つめた。

白鳥『そりゃ可愛い後輩だからね!!』

カモ『昔付き合ってたとかですか?』

その場の空気のノリに任せて直球でぶつけてみた。

可愛い後輩だから?

そういう答えでは納得出来なかった。

白鳥『いや、高校の時に告白されたけどね、ふっちゃったんですよ。』

カモ『え・・・・』

えぇえぇええええええええええええええええ!!!

つい大きな声を出してしまう。

隣でお茶をしていた、マダム二人組がこちらを振り返る。

カモ『なんでふったんですか?』

白鳥『その時、ちょうど彼女がいましたから。』

カモ『そうなんですか!!それは仕方がないですよね。』

白鳥『うん、結局その時の彼女が今の嫁ですw』

カモ『そうだったんですね。』

白鳥は笑っていたが、あまり幸せそうな笑顔ではないような気がした。

それでも、カモは心の底から安堵した。

頭の中でぐるぐる回っていたもやもやが一気になくなった。

カモ(それで二人は仲良く見えただけ…。)

白鳥『ところでカモ先生は…みのりとどんな関係なんだい?』

カモ『えっ!?』

聞かれるかもしれないとは思っていた。

ただ、白鳥がこのタイミングで聞いてくるとは思わなかったので、意表をつかれた形となった。

カモ『別に…普通に不動産担当者とそのお客ですよ!!』

実際は、板前(調理者)とカモ(食材)の関係だけど

白鳥『ただの販売員と顧客の関係には見えませんよ、カモ先生も、みのりも…。』

カモ『ただの販売員と顧客ですよ(今のところは)』

白鳥『そっか、じゃあ問題ないですね。』

カモ『問題??』

白鳥『みのりを振ったことを後悔してるんですよ…。』

カモ『え…後悔?』

白鳥『うん、今になってだけど。』

白鳥の顔からすーっと笑顔が消える。

白鳥『みのりのこと、まだ好きかもしれない。』

カモ『えっ!?』

突然のカミングアウトに驚く。

正確に言うと、驚くことさえ忘れるほどの衝撃を受ける。

カモ『だ…だって結婚してるんでしょう!?』

つい大きな声になってしまう。

白鳥『離婚を考えています。』

カモ『え…。』

白鳥から出る言葉の全てが、重い。

まさか、みのりさんとデートしようと思ってた、こんな爽やかなカフェでこんな状況になるとは思っていなかった。シャンゼリゼ通りで女の子に声をかけながら歩いていたら、突然F-22によって空爆されたような現在の状況。

カモ『みのりさんは知っているんですか?』

白鳥『この前、福岡に来た時に伝えました。』

みのりさんは何も言わなかったけど、そんなことがあったのか…。

それは確かにカモに言う必要はないけど、カモに聞く権利ないけども…。

白鳥、君は数回しか会ったことがない人(カモ)にすごいことを言うんだね。

カモ『みのりさんは何て?』

白鳥『ふられましたよw離婚するなって説教されました。』

カモ『そ…そうですか。』

白鳥『でも、諦められないんです。どうしてもみのりが好きなので。』

カモ『そうですか…。』

胸が痛い。動悸がする。

今までで一番の動悸と胸痛。

これ、心電図でST上がっちゃってるやつかも…

『お待たせしました。』

クレープが届く。

イチゴ、メロン、マンゴー、ブルーベリー、そしてアイスクリームが添えられた色鮮やかなクレープ。そう、まさにお皿の上は『春の訪れ』だった。

ただ、その場の空気は、『絶望的なツンドラ気候』だった。

白鳥『美味しそうですね。』

カモ(お前のせいでそれどころじゃないwwww)

カモ『そ…そうですね。食べましょう』

ナイフとフォークでクレープを処理する。

この右手のナイフで今すぐこの白鳥を刺したいwwwって思いながらクレープを切る。

気がつくと、クレープが必要以上に小さく切られ、キズパワーパッドのようになっていた。

白鳥『ちょっと話過ぎちゃいましたかね』

カモ『どうでしょう…。』

話しすぎというより、完全にオーバーキルだった。

『僕はね、もう死んでるんですよ。』

というブラック・ラグーンのロックのセリフが思い浮かんだ。

本当に離婚する気なんですか?』

白鳥『今、離婚するとみのりにとって脅しみたいになってしまうので…。』

カモ『でしょーね!!』

白鳥『でも、離婚はしますよ。本気ですから。』

カモ『じゃあ、離婚することで今の奥さんは不幸になっちゃいますよね。』

自分は本当に性格が悪い。

こんなイヤミな言い方をする自分に自己嫌悪してしまう。

が、今はそんなことを言っている場合じゃない!!

今すぐ目の前の白鳥を思いとどまらせなければいけない。

白鳥『そうですね…それは本当に申し訳ないと思っています。』

カモ『そうですよ!!離婚になったらお金もかかりますし!ほらっ!慰謝料とか!!』

自己嫌悪を通り越して、この下卑た自分の性格が快感に変わる。

そう、もともとカモは性格が悪かった(自覚)。

白鳥『離婚になったら、自分の財産は全部渡すつもりです。また1から稼がないといけませんが、みのりがいたら、すぐに稼げそうな気がします。』

何言っちゃってんのwwwww

こいつ!!!!!!!!!男前すぎるだろwwwwwww

いやいやいやいやいや、これは非常に不味い!!

コンディオレンジ!!繰り返す!!コンディオレンジ!!!

カモ『ま…まぁ、すぐに結論を出す必要はないので、帰ってからゆっくり考えてみてください。』

カモは掛ける言葉が見つからず、診察室の1コマのようなセリフを吐く。

白鳥『カモ先生、応援してくださいね。』

白鳥は、再び笑顔を取り戻し、カモを見ながら、にこっと笑う。

その笑顔には、勝者の余裕すら感じられる。

コンディレッド!!繰り返す!!コンディレッド!!

状況は非常にまずい…。

応援出来るはずないだろwwwww

今すぐこのナイフとフォークで白鳥の左右の頸動脈を同時に強く圧迫してやりたい気持ちを抑えながらカモは答えた。

カモ『みのりさんは、本当にステキな女性だと思います。今まで、みのりさんと出会ってから、いろんな物件を買ってきました。いろんな理由で買えなかった物件もたくさんありました。物件が買えずに一緒に泣いた時もあります。』

白鳥はうなずきながら、じっとカモを見つめていた。

カモ『みのりさんと一緒にいると、どんなに仕事がしんどくても、どんなに上司からひどいことを言われても、借金が増えて与信が枯渇しても、毎日が楽しくて、ワクワクするんです。』

春の日射しは、白鳥のイケメンスマイルを一層引き立てたが、

その白鳥の顔から徐々に笑顔が消えていく。

カモ『僕はみのりさんを愛しています。』

沈黙が訪れた。

コーヒーを飲む二人。

コーヒーカップとソーサーがぶつかる音が響く。

白鳥『やっぱりそうでしたか。』

白鳥はつぶやいた。

笑顔が消えた顔に三度笑顔が戻る。

白鳥『じゃあ…私たちはライバル…ということになりますか?』

カモ『そうなりますね…。』

白鳥もカモも顔は笑っている。

ただ、お互いに目は笑っていなかった。

白鳥『自慢じゃないですが、僕は勝負事であまり負けたことがないんですよ。』

白鳥は、コーヒーカップを指でなぞりながら、言った。

カモ『じゃあ、味わってください、敗北の味を。』

白鳥『そうですね、でもカモ先生だったら不思議と負けても良いと思ってしまいそうですよ。』

カモ『まだまだ余裕がありそうですねw』

白鳥『そんなことないですよw』

カモ『じゃあ、行きましょうか。』

この戦国時代の茶室会議のような、男二人のお茶会は終わった。

そして戦国時代と同じように、みのりさんをめぐって戦が始まることとなった。

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