#13.既読スルー

LINE既読スルー

仕事帰りに、みのりさんの勤める不動産屋に向かった。

社長(安岡力也)は忙しそうに働いていた。

事務所内は普段と違い、慌ただしい様子だった。

カモ『お邪魔しまーす。』

社長『おう、今日賃貸の方がバタついてるから、そっち座ってコーヒーでも飲んでて。』

カモ『自分で煎れるんですね、わかります。』

社長『当たり前だろ、XXすぞ(幻聴)

カモ『((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

しぶしぶ自分でコーヒーを入れる。

オフィス内にみのりさんの姿がない。

がいたら、いたらでどんな顔をして会えばいいのかわからないけども。

カモ『この時期は、賃貸が忙しくなるんですね。』

社長『そうだな、3月は卒業とか異動とか色々あるからな。』

カモ『他の社員さんも忙しそうですね。』

社長『特に今日は、みのりがいないからな、こっちも忙しいんだわ。』

聞きにくいことを社長から口にしてくれた。

この社長、いつもタイミングが良いというか、知っててわざと言ってるのか、

どっちにしろ、つかめない人ではある。

カモ『みのりさん、どっか行ってるんですか?』

社長は何かを記帳しながら、こちらを見ることもなく答えた。

社長『出張行ってるわ、かもねぎ先生の仕事で。』

突然、自分の名前が出たことに驚く。

カモ『僕の仕事?』

社長『あの物件だよ、福岡の物件』

カモ『あぁ、この前見てきたやつですね。』

社長『そうそう、あれの値下げ交渉しに行ってる。』

カモ『わざわざ福岡に?』

社長『X曜日に売り主に会うんだとよ。正確には売り主とその顧問税理士とだったかな』

カモ『白鳥は?』

社長『そりゃもちろん同行してる、もともとはあいつの仕事だしな。売り主側の仲介飛ばして交渉したら大問題だわw』

白鳥も一緒なのか…。

仕事と分かっているけども、軽く嫉妬してしまう。

カモ『自分は行かなくていいんですか?』

社長『当たり前だろ、仕事休むわけにはいかないだろうし、いきなり買い主が売り主に会ってどうするんだ?』

カモ『それはそうですが…。』

社長『まぁそういうわけで、今日はいないからな。まぁ気をおとすなや。』

みのりさんがいないのは残念だったが、どことなく安心した気持ちになったのも事実だった。

(LINEの返信がないことを社長に相談するか…。)

カモ『社長…』

社長は突然 書類を書くのを止め、ギロっとこちらを振り向く。

カモ『今回、半ば無理矢理 値下げ交渉をして申し訳なかったです。』

社長はゆっくりと立ち上がり、カモが座っているソファに向かって歩き始めた。

(殺られるっ!!!!!)

一瞬で悟った。これはやられるパターン!!

机の上に置いてある、クリスタル製の灰皿をとりあえずなるべく遠い、

机の端っこにさりげなく、急いでずらした。

社長が目の前に座る。

社長『あのな…?』

カモ『Σ(ロ゚ ノ)ノひぃっ!

社長『不動産取引というのは、駆け引きでもあり、戦争なんだよ。』

戦争という言葉にカモの体はビクッとなる。

社長『売り主、買い主の争いみたいなもんだ。どっちが偉いってこともない。その売り主と買い主が、それぞれ好き勝手主張して、うちらみたいな仲介業者が折り合いをつけて成り立つのが不動産取引だ。』

社長『今回、カモ先生が値下げしろって言ったのも、当然の行動だ。あれは確かに収益が低かったからな。』

カモ『でも、僕が主張して値下げしたら、社長の会社の取り分が減っちゃいますよね。』

社長『それは当然減る。』

カモ『怒らないんですか?』

社長『だから言ってるだろ、そこで折り合いをつけて成立されるのがうちらの仕事なんだよ。そもそも、値下げを言わない時点で、カモ先生は売り主の言いなりになっているということだ。その時点で、取引には負けているんだよ。そもそも何で言いなりの値段で買う必要があるんだ?弱みを握られているわけでもあるまいし。』

(みのりさんがオススメしたから…。)とは言えなかった。

社長『例えば今回、6000万円であの物件をカモ先生がそのまま買ったら、売り主は大もうけ、うちも大もうけ、カモ先生が一人負け、そんな状態になるんじゃないか?まぁ物件の評価はフタを開けるまで分からない部分があるけども。』

オフィス内の社員は、社長が場所を移動したことを気にもせず、黙々と仕事をしていた。

社長はゆっくりと続けた。

社長『俺は正直、カモ先生にそんな取引はして欲しくない。まぁ担当はガッキーだから口は出さないつもりだったが。もちろん、法外なぼったくり価格ではないとは思うけどな。』

カモ『社長の会社は損しますよ。』

社長『儲けが減るだけだろ?』

カモ『はい。』

社長『でもな、カモ先生が後で「あの取引は損だったな」と思ったらどうなる?』

カモ『どうなる…?普通だったら取引しなくなるかもしれませんね (僕の場合はガッキーがいるので関係ないですけど)

社長『そこだ!商売の基本でな、三方よしという考えがあるんだわ。売り手よし・買い手よし・世間よしという「三方よし」な。不動産で言うと、売り主よし、買い主よし、仲介業者よしだな、がはは。』

社長はドヤ顔をしながら続けた。

社長『この三方よし、何が大事かわかるか?』

カモ『いえ…。わかりません。みんなハッピーってことですか。』

社長『信頼だ。』

カモ『信頼?』

社長の言葉から出た意外な言葉に、カモは驚いた。

し・ん・ら・い? 新しい脱〇ハーブかと一瞬思った。

社長『自らの利益だけを追求するのではなく、みんながハッピーになることを大切にするんだ。そうすることで、信頼が生まれる。特にうちらみたいな仲介業者は、信頼がないと商売が成り立たないこともよくある。』

カモ『なるほど。』

社長『だから、今回みたいにカモ先生に一方的に買わせて一時的に儲けたというのは、取引としては二流だ。本当の意味で、カモ先生にも納得してもらって取引をしないとな。(今後も、かもねぎ先生からいっぱいお金毟るためにも生かさず殺さず)』

カモ『利益、がっつり減りますよ?www』

社長『気にするな、これからもイッパイ買ってもらうからwwwぐはは。』

カモ『でも みのりさんは怒っているんじゃないですか?』

社長『なんで?』

カモ『わざわざまた福岡まで行かされて…しかも利益減ってるし…。』

社長『いや、あいつ張り切って福岡行ってたぞ、絶対値切ってきてやるっ!!って。』

カモ『え??』

社長『カモ先生、いつも私が出す値段をそのまま買って、楽だし儲かるから良かったけど、大丈夫かなって思うようになったって言ってたぞ。言いなりに買わしているような気がして罪悪感もあったようだなw』

カモ『そうなんですか?』

社長『あぁ。今回は、カモ先生が値下げするように強く言ってくれたから、私も頑張らないと!ってちょっと嬉しそうだったぞ。』

カモ『でも、LINEはずっと既読スルーされてますよ?』

社長『それは…なんとなく想像つくけどな…。まぁ福岡から帰ってくるまで待ってみな。ここだけの話、あいつ有休とって行ってるんだぞww』

カモ『え…。そうなんですか?』

社長『俺は電話で良いだろって言ったんだけどなw』

カモ『そうなんだ…。』

社長『だから、LINEは待ってればくるはずだ。』

カモ『わかりました。』

わかったことと、知らなかった方が良かったことの2つが同時に来た。

嬉しいような、申し訳ないような複雑な気持ち…。

とりあえず、今はみのりさんからの連絡を待とうと思う。

今は、おはようからおやすみまで、見守るしかない。

その後、宅建の勉強で出たわからないところを教えてもらい、帰宅。

多分、社長には伝わったと思う、

かもねぎ先生、宅建の勉強やる気ねーな!!って…。

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