#−11.入院

カモイラスト

気がついたら、病院のベッドにいた。

左前腕に点滴が刺さっていた。胸にはシールみたいなものが貼られていて、いくつものカラフルな線が体から出ていた。

『ここは…病院?』

点滴パックのからポタポタと落ちる点滴を眺めながら、置かれている状況を確認した。

ゆっくりベッドから起き上がろうとしたら、突然股間に違和感と痛みが走った。ち〇ち〇の先っぽから、管みたいなものを挿入されていた。

『これは何のプレイかな…。』

現状がいまいち把握出来なかったので、とりあえず声を出して誰かを呼ぶ。

『すいませんー。誰かいますかー?』

看護師『はーい』

長めのポニーテールをした若い看護師さんが駆けつける。

この時、ベッドの横にボタンがあったことに気づく。

(これを押せば良かったのか…。)

自分の人生は、こんなのばっかりだ。後から、色々と気づかされる。そう思うと、ちょっと笑えてきた。

看護師『あ、起きられましたか。お熱を測りましょうか。』

カモに近づき、体温計を脇に刺してくれた。

長いポニーテールと白いナース服から、シャンプーと柔軟剤の混ざった甘い香りがした。

禁欲生活が長いカモには刺激が強すぎた。

これが…昔ビデオで見た病院モノ…ゴクリ

クララ(意味深)が立とうとしていた。

体温を測定しながら、看護師さんからだいたいの事情を説明してもらった。

予備校で倒れて、そのまま救急車で病院に来て入院になったこと。

来た時からずっと寝てたこと。今日が倒れた日の翌日であること。

看護師さんが説明してくれている最中、 興奮してきたので

あまりにも下半身の違和感が強く、痛みもあったので、

とりあえずこの管の入ったち〇ち〇を、この看護師さんに見せたいと思った(錯乱)。

『ち〇ち〇は、挿れるものであって、挿れられるものではないですっ!!』

と訴えたかった。

ただこれを言うと、別の科の鍵のかかる病棟に連れて行かれる可能性が高いから自重した。

ただ、下半身の違和感は、どうしても我慢出来なかった。

おしっこをしたい感覚に襲われていた。管からおしっこが出ているにも関わらず!!

『これ、抜いて欲しい。トイレに行きたい。』

カモ『あの、何か管が入っているんですけどっ!!』(下半身ぴらぁああ)

我慢出来なかった(色んな意味で)

長い禁欲生活だったので(必死な言い訳)

倒れたことによる精神的動揺だったのか(必死な言い訳)

下半身を露出して見せつける行為を我慢できなかったのだ(切実)

・・・。

・・・・・・。

看護師『あ、それトイレ行かなくてもおしっこ出来るように管を入れているんです、おしっこしたい感覚があるかもしれませんが、おしっこは出ているので大丈夫ですよ。』

冷静だった。20代と思われる、うら若し乙女が

立ち上がりつつある僕のクララを見て、動じることなく、冷静に答えた。

カモ(これがプロフェッショナル…)

自分の浅はかさを痛感した。

クララは再び、着席した。

その後、主治医と思われる30代くらいのお医者さんから説明を受けました。

横紋筋融解症、脱水症という診断でした。

血液検査では肝酵素とCPKが上昇、特にCPKは10,000越えてました。

ドラゴンボールで言ったら、ギニュー隊長の戦闘力くらいありました。

おしっこも、ちょっと茶色くて ミオグロビン尿ってやつが出ていました。

医師『ここ最近、体はしんどくなかったですか?』

カモ『そういえば最近、風邪っぽくて体もだるかったです。』

医師『風邪だけではこんなにひどくならないけどね、普通は。』

カモ『そうなんですか?』

医師『何か激しい運動とかしましたか?』

カモ『いえ、むしろ動いていません。』

医師『そうですか、何かお薬を飲んでいませんか?』

カモ『薬はないです。栄養ドリンクと薬局で買えるカフェインですかね。』

医師『それは市販の?』

カモ『はい、市販のやつです。栄養ドリンクは、リポビタンDとか、ユンケルとか、ビタシーゴールドとか』

医師『それは一日何本くらい飲んでいますか?』

カモ『1〜3本くらいですかね?』

医師『どれくらいの期間ですか?』

カモ『わかりません。半年以上ですかね。』

医師『カフェインは?』

カモ『エスタロンモカっていうやつです。』

医師『それは、どのくらい内服していたの?』

カモ『わかりません、眠くなったらラムネのようにポリポリしてました。』

医師『ラムネ』

カモ『ラムネ』

医師『すぐにやめてください。捨ててください。』

カモ『ラムネ』

医師『それはもうダメです。死んでしまいます。』

カモ『栄養ドリンク…。』

医師『それも禁止です。』

カモ『はーい (´・ω・`)しょぼん』

医師『予備校生…ですよね?』

カモ『一応…。』

医師『一緒に来てくれた予備校の先生から事情は聞きましたよ。そんなに勉強しないと受からないの?』

カモ『自分、今までろくに勉強もしてこなかったので…。』

医師『そうですか。でもこのままだと死ぬところでしたよ。』

カモ『ギリギリセーフですね!!』

医師『そうですね…。だから退院したら無理な勉強はしないでください。』

カモ『だが断るっ!!』

だが断るっ!!

医師『はっ???』

カモ『しますよ、勉強!! 今この瞬間から。』

医師『え?』

カモ『忘れていました。やらないと。』

荷物を、自分のカバンを探す。

教材が入っているはず。

医師『すいません、自分の荷物はどこに?』

看護師『それなら、ロッカーにあります。』

看護師さんにカバンを取ってもらい、中を確認する。

カモ(あった…。数学のテキスト、地理の暗記ノート、そして英作文の添削ノート。)

医師『しばらくは勉強を休んで、ゆっくり休みなさい。』

カモ『いえ、このままここで勉強させてください。』

医師『今は体を治すことが大事ですよ。』

カモ『わかっています、ただ自分には時間がないんです。』

わかっている、論理的に正しいのは向こうだ。

ただし、もう僕は引き下がれない。

どうせ死ぬなら、最後まで戦って死ぬ。

カモ『もし、どうしても勉強が禁止なら、今すぐこれらを全部引き抜いて退院します。』

駆け引きどうこうじゃない。本気だった。

勉強が出来なければ、追い詰めたライバルを逃がし、

後ろから追いかけてくるライバルに刺される。

病気だからといって、のんきに休んでいる時間なんてない。

医師『そんなに…受験が大事ですか?』

カモ『受験が大事…?わかりません。最初は、馬鹿にした同級生を見返すためだけに、医学部を受験していました。今となっては、なんで医学部にこんなにこだわっているのか、はっきりとはわかりません。受験が大事なのか、医学部が大事なのか、医師になることが大事なのか、何が大事なのか…。』

カモ『ただ、ここを一歩でも退いてしまったら、両親の期待とか、ゲーリーとの約束とか、色んなものがきっと壊れてしまいます。自分は今までこんなに人に期待されたことはなかったし、こんなに一生懸命生きたことがなかったんです…。なので、今ここで少しでも退くと、二度と…二度と一生懸命生きることが出来なくなるような気がして…。』

医師『それが挫折ですよ。』

カモ『じゃあなおさら退けません、例え病気で死んだとしても。』

医師『そうですか…。君もこっち側の人間なんだね。』

カモ『えっ?』

医師『勉強を許可します。ただし、薬物、栄養ドリンクは禁止。夜間は23時までに消灯して寝てください。あとで私が使っているデスクスタンド、貸してあげますよ。内緒にしてくださいよ。』

カモ『わかりました。ちなみに入院期間はどのくらいですか?』

医師『血液検査の結果次第ですが、早くて1週間ですね。』

カモ『了解です。』

センター試験に間に合う。

予備校にも行ける!!

医師『そうそう、かくいう私も再受験でね…。』

カモ『Σ(゚ロ゚;)マジデスカ』

医師『入学して6年、初期研修2年、8年後かな…待ってるよ。』

カモ『はいっ!!!!』

勉強しやすいように、机の位置を整えた。

カバンから勉強道具を取り出す。

重い…。

病気だからか、体の力が入りにくい。

なんとかテキストとノートを引っ張り出す。

英作文ノートを開くと、ポストイットが挟まっていた。

お前のことだから、多分病室でこれを開いて勉強しようとするだろう。

今は休め…と言いたい所だが、どうせ言っても休まないだろうし、

休もうとしても休めないと思う。

だから、やれっ!!最後まであがいて見せろ!!

もし死んだら俺の枕元に立てばいい。だから今はやれっ!!

特に英作文と数学の計算とグラフ問題は欠かさずやるように!

疲れたときは、地理の暗記だ!!

ゲーリー

この先生、本当に鬼畜だな…。

カモ、約30時間の休息後、再起動。

その日の夕方、両親がお見舞いに来てくれた。

優しい言葉の1つでもかけてもらえるのかと思ったら、

父『勉強ごときで倒れるとか、情けない』

母『本当、ずっとイスに座ってるだけなのになんでそんなに体を壊すの?』

ちょっと待て、お前ら勉強の『べ』の字もしたことないだろwww

特に母上、お前中学校中退じゃねーかwww

そして夜には、ゲーリーと国語の先生、チューターが来てくれた。

ゲーリー『早速、やってるなwww』

カモ『点滴しながらでも勉強しろっていう鬼畜な教師がいるので。』

国語講師『なにそれひどいwwww』

チューター『人間ではないですね、悪魔ですよ、悪魔。』

国語講師『教育者とは思えない、鬼畜だな…。』

ゲーリー『うっさいwwwそういう時もあるんだよ!!』

チューター『予備校ではゲーリーが生徒を殴って病院送りにしたみたいな噂が出てました』

カモ『なにそれ、面白いwwww』

ゲーリー『風評被害すぎるだろwww』

ゲーリーは安心した様子だった。

いつもの表情に戻っていた。予備校からそのまま来たのだろう、スーツを着て、いつもの色入りオシャレ眼鏡を身につけていた。

ゲーリー『これ、お土産な。』

ゲーリーは薄い冊子をカモに差し出した。

センター試験予想講座と書いてあった。

チューター『まだみんなには配ってないけどね』

ゲーリー『去年のより若干薄くなっているけど、手抜きじゃねーぞwww』

確かに、去年のテキストよりも若干薄くて、軽い。

ただ、カモにとっては、去年よりもずっと重く感じるモノだった。

受け取った瞬間、その重さに、涙があふれてきた。

本当にありがとうございます…。

お見舞いを終え、予備校の先生が病室から出て行った。

賑やかだった病室がまた静寂に包まれる。

さて、もうちょっとやるか。

勉強を再開しようとした時、ゲーリーが部屋に戻ってきた。

カモ『忘れ物ですか?』

ゲーリーは何も言わず、カモを抱きしめて言った。

ゲーリー『あと少しだ、あと少しでいい、走り続けるぞ。』

普段あまり見ない、真剣な顔。

ゲーリー『じゃあな!!』

そう言って、ゲーリーはカモの方を振り返ることなく、病室を去った。

また静かな病室に戻った。

カモ『当然っ!!』

1週間後、血液検査をクリアし、カモは退院した。

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