#96.福岡、再び(その3)

白鳥(福岡の不動産屋さん)

『カモ先生、この2番目の物件なんですけど…』

白鳥がちょっと真面目な顔で続けた。

白鳥『まだ表には出てません。売主から直接持ち込まれた案件です』

カモ『まじで…』

白鳥『まじです』

みのり『どら焼き美味しい』

確かに、福岡市でこの価格は安いと思った。

物件もきれいそうだし、何より満室経営。

白鳥『ここ、表に出ちゃうとすぐ買いが入ると思いますが、どうします?』

カモ『え、なに、今この瞬間決める感じ!?物件一度も見てないYO!?』

みのり『ファモ先生、フッkネン見ずに買うの得意じゃふぁいですか(笑)』

みのりさんはどら焼きで口をいっぱいにしながらモゴモゴ言った。

カモ『いいから、みのりさんはそのままどら焼き食べてて!』

そう言って、自分のお皿に置かれてた生どら焼きをみのりさんのお皿に乗せた。

みのり『\(^o^)/』

白鳥『これはノールックで決めても良いくらいの物件ですけど、カモ先生の期待に応えて、見に行きましょうか!!』

カモ『えっ…全然期待してないんだけど…』

白鳥『Kさん、車出すので準備してください。すぐに出ますよ!』

もう準備してますと言わんばかりに、白鳥不動産の社員が車を回してきた。

みのり『どら焼き、ちょっと持っていきますね!!』

そう言うみのりさんの腕の中にはすでに生どら焼きが入った箱が抱えられていた。

カモ『それちょっとじゃないんだけど…』

白鳥『みんなでドライブに行きましょう!』

このメンバー、気がついたらまたやばい自由人3人組だった。

その3人組で、2番目のアパートを見に行くことになった。

車で移動すること20分ちょっと。その移動時間の間、車内では福岡の不動産市況、ビジネスの話、特に最近流行っているお金儲けの話をしてもらった。その中で面白かったのは、

会社の新年会で、酔っ払って潰れた社員を立体駐車場に停めてた車の車内に残して3次会に行ったら、車が地上より遙か上空に格納されてしまって朝まで脱水状態で軟禁された話。

携帯電話の充電がなかったらしく、翌朝 車内で発見された時は、体中大量の吐瀉物にまみれて口から泡を吹いた状態で発見されて、救急車で病院に搬送された話が不動産屋っぽくて面白かった。

白鳥『これ見てください。死にかけてるのに、SNOWで可愛いワンワンになってるんですよ!!最高じゃないですか!?』

白鳥の携帯をのぞきこむと、犬の耳と鼻がついた死にかけている男性社員の横で、、茶色い髪を巻き巻にした女性社員がピースサインで映っていた。

みのり『かわいい( *´艸`)』

カモ 『いやいやいや、これ完全に命のやりとりしている顔だけど…』

白鳥『さすがに焦りましたよ、そのまま入院しちゃうんですからwwww』

カモ『入院っ!?Σ(゚ロ゚;)』

みのり『あやうく、立体駐車場が事故物件になるところでしたね』

白鳥『それですよ!!あそこのオーナー、うちのお得意様なので危なかったですよ!!』

カモ『お得意様じゃなかったらノープロブレムみたいな言い方すんなwwww』

『僕はまだ正常でいたい』と思うのに笑いが止まらない。

自分も不動産業界に心を染められてしまったのか、みのりさんの働く世界に近づけたようなうれしさと、アビスの地下最深部に振動を感じさせない日立の高速エレベーターで直行してしまったのごとく心が穢れてしまった悲しさを味わった。

とりあえず不動産業界の闇は、アビスの最深部より深いのは間違いない。


そうこうするうちに、物件の近くまで来た。

福岡市の端っこ、古い商店街のような街並み。

そのアーケード街から少し外れたところにそのアパートは建っていた。

白鳥『ここです、どうですか、きれいでしょう!?』

まるで自分が建築したかのような言い方だった。

白鳥『お気づきのように駐車場はありません。だってここは車が必要ないアパートですから!歩いて五分で駅ですし、バス停もあります』

確かに、アパートからは駅から降りてきたばかりの人の群れが見えた。

カモ『商店街も、寂れてる感じはしませんね』

白鳥『そうなんです、この商店街は近所の住人だけじゃなくて、駅を利用する人にも愛されています。そして何より、このエリアは学生が多いんですよ。』

カモ『学生?』

白鳥『そうです、隣の駅には専門学校があったり、数駅先には大学とかもあるので、このエリアは一人暮らししている学生が多くなってます。そして、その学生はほとんど商店街でご飯を買うんです。ほら、ここ昔ながらの安くて美味しいお店が多いから。』

そう言われると確かに、トートバッグを持った女子大生が多い。

カモ『女子学生専用のアパートにしましょう!!管理のために毎月見に来ます!!(必死』

白鳥『何を言っているんですか!!そうなったら管理は管理会社の仕事です!!ここは管理会社を代表して僕が毎月、いえ、毎週見に来ますよっ!!』

横から痛い視線を感じる。

カモ・白鳥『ごめんなさい…』

それから僕たちはアパートを舐めるように見て回った。掃除はされているか、ひび割れはないか、塗装は大丈夫か、どんな人が住んでいるのか、ネチネチと見て回った。

みのり『これ、買っても良いんじゃないですか?建物もキレイでまだまだ行けそうですよ』

確かに、壁を触っても指は汚れなかったし、床のコンクリートなどもひび割れとかはなかった。

カモ『ですね…ここ利回りも良さそうですし』

みのりさんと電卓を叩きながら話し合った。

気がつくと、何か前向きな気持ちになっていた。不動産の怖い所は、実物を見てしまうと買いたくなってしまうことだ。

一通りアパートを見たあと、今度は周辺を散策した。

実際、ここに住んだら便利なんだろうか、住みやすさはどうなんだろう。

カモ『なんか三丁目の夕日に出てきそうですね…』

みのり『ここ、良いんじゃないですか??住みやすそうですよ??』

カモ『確かにここは良いと思いますけど…なんか昭和の香りがしますよね』

一通り歩き回った後、突然白鳥が言った。

白鳥『お腹空きましたね、ご飯食べに行きましょう』

確かに、いい加減歩き回ってお腹が炭水化物を欲していた。

みのり『はーい!!』

カモより早く、反射的にみのりさんが返答した。

カモ『みのりさんさっきどら焼きいっぱい食べてたのnぐぇっ(ry』

脇腹にぐーぱんちがとんできた。

みのり『何食べに行くんですか?』

白鳥『美味しい担々麺を出すお店があるんです、そこに行きましょう!!ご馳走しますよ!!』

カモ『ご馳走しますよって…お前…今まさにカモからその何百倍も巻き上げようとしているよね??

何か色々理不尽な香りがいっぱいしたけど、白鳥さんお勧めのお店に向かった。

その3に続く

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