#94. 福岡、再び。(その1)

かもねぎ特攻

誕生日の朝、いつものように回診業務をしていた時、突然PHSが鳴った。

PHSの画面には、『事務』と書いてある。マンション勧誘の電話や、アポイント、診察相談などがあった時に呼ばれる番号。

『荷物が届いたから、取りに来てください』

少し疲れた声で電話に出た僕に対して、事務の人は僕より2段階くらい明るい声でそう言った。普段は、郵便や宅急便で荷物が届いた時は、秘書さんが医局の机の上に勝手に置いてくれるので、荷物が届いただけでわざわざ電話で呼ばれることはなかった。

回診が終わり、なんで荷物を取りに来いと言われたのかわからないまま不思議な気持ちで荷物を取りに行った。

事務室の扉を開けた瞬間、カゴに入った大きな花束が目に飛び込んできた。

『カモ先生、ハッピーバスデー!!』

花束に刺さったカードがカモ先生の誕生日を祝ってた。

普段はAmazonやユニクロからしか荷物は来ないのに、お洒落なモノが届いたせいで、事務の職員達はざわついていた。

カモ先生自身、こんなキザなことをする人に、全く心当たりがなかった。

頭文字Dで藤原拓海にバトルを挑みに来た高橋涼介が頭をかすめたくらいだった。

花束参考画像

荷物を受け取った病院の事務所では、『カモ先生に彼女からプレゼントが届いた』『VIPな患者さんから贈り物が来てる』などと様々な噂が立っていた。

『一体誰だろう…まさか母上??』

確かにカモ先生の母親は、カモ先生が社会人になってからしばらくして突然父親と離婚し(事後報告)、突然お水の世界に飛び込む(事後報告)という頭のネジがJIS規格外の人間だったので、突然息子の誕生日に花を送りつけてくるという可能性は無きにしも非ずだと思った。

カモ『でも…母親は花より団子の人間だ。さすがに息子の誕生日に花を送るという概念は持ち合わせていないはず…。えっ…もしかして新しい男の影響とか…??』

すごく複雑な気持ちになったが、同時に『あれ?自分、母親っていたっけ??』という気持ちにもなった。

『多分、これは母親ではない』そう無理矢理思い込もうとしたが、そうだとすると、他にこんなキザなことをする人に、全く心当たりがなかった。

残念ながらみのりさんはこんなお洒落なことはしないし、

出来ない(断言

そもそもみのりさんは、花より団子ではなく、花より現金。

むしろ『何より現金』な人間だ。

っていうことは…

この花束を送って来たのは、一体誰なんだろう…

って思ったその瞬間、差出人の住所と名前が目に入った。

福岡県福岡市博多区…

ビックリするカモ

一瞬、全身の主に上半身の毛穴がぞわってなった。

白鳥だった。

これはいけない。警戒レベルが一瞬で上昇した。

それと同時に、花束と一緒に届いたこの小さい箱の存在が気になった。

爆発物…ではないと思う。

さすがに管理物件(アパート)のオーナーを爆殺することはないだろう。

でも、一体何が入っているんだろう…誰かの小指とかだったらやばい。

そう思って、花束と箱を医局に持って帰った。
そして自分の机の上で、こっそり開けてみた。

『福岡でお待ちしています』

そう書かれたカードと、JTBのギフトカードが入っていた。

カモ『これは…福岡まで来いってことかな?(白目』

とりあえず、これは電話して確認しよう。どうみてもトラップの香りしかしない。そう思ってすぐに白鳥に電話した。

白鳥『届きました??』

白鳥との電話

はっきりとした口調。まるでカモからの電話を待っていたかのような対応をされた。

カモ『まさかの職場に届いんたんですけど…』

白鳥『だってカモ先生、家にいないでしょう?』

確かにそうだけど、職場に花束を届ける人って、

頭文字Dの高橋涼介しか知らないんだけど…。 

白鳥『イメージとしては、タキシード仮面の登場シーンだったのですが』

相変わらず、本気でそう思ってそうな言い方だった。

いつも電話する時は挨拶と報告だけだったけど、その日は違った。

白鳥『見せたいモノ(物件)があります』

カモ『見せたいって言われても、与信ないので買えませんよ??』

白鳥『そろそろ与信復活しそうじゃないですか??』

カモ『えっ…』

確かに平成30年度、カモ先生は働きまくった。そしてご飯は病院食とかモヤシとか永谷園で頑張っていた。

そう、今回の確定申告でカモ先生は手応えを感じていた。

白鳥『ハゲタカに金の絡む隠し事は通用しません!!』

カモ『自分でハゲタカって言っちゃってるし…そのセリフまんま盗用じゃないですかw』

白鳥『冗談ですよwww』

いや、冗談じゃないだろ…そう思ったけど、その感情が言葉になる前に、白鳥は言った。

白鳥『旅行券、2人分入っているのでみのりさんと一緒に来てください』

カモ『まじでかっ!?Σ(゚Д|||)

白鳥『はい、カモ先生の誕生日プレゼント、何が一番喜ぶかなって思ったら、それが一番かなと思って』

白鳥さん、めっちゃいい人っ!!!!!!

みのりさんとの旅行をプレゼントとか、この人すでにマズローの欲求5段階説の最上位にいる人なのかな??

白鳥『ぜひお二人で福岡にいらしてください^^』

カモ『いくいくいくいく!!!!』

白鳥『お仕事は大丈夫ですか?』

カモ『ちょうど有給を取ろうと思ってたところなんです!!』

白鳥『それはちょうど良かった^^』

とんとん拍子で話しが進んでいく。完全に白鳥のペースに乗せられていた。



仕事が終わって、帰り道にあるモスバーガーでみのりさんと待ち合わせた。

みのり『白鳥さんのことだから、絶対罠ですよ!!』

みのりさんは、モスシェイクから出たストローを加えたまま、普段は細い目を大きく見開いて軽度ろれつ難の状態で言った。

確かに、その意見には同感だった。過去の言動からみても、今回の福岡招待はどうみても白鳥の罠の可能性が高い。

ただ、みのりさんの口から『罠』という言葉が出た瞬間、

『今回はこの二人、グルじゃいっぽい!!』

っていう妙な安心感が生まれていた。

みのり『でも…カモ先生いつも働きづめだから、せっかくだから一緒に福岡に旅行に行きましょうか♪』

カモの方を見て、にこって笑うみのりさん…。

その上目遣いにやられて、また正常な判断力を失ってしまったまま、

そう、医療用語でいう心神喪失状態のまま、また福岡に行くことが決まってしまった。

『今回の福岡旅行、みのりさんは知らなかったし、福岡に行って白鳥の罠にかかったとしても、絶対自分の味方をしてくれる!!』

そう思って完全に油断していた。この時、すでに自分はミスを犯していた。

完全に見逃していたのだ…

みのりさんが1ヶ月以上前から『るるぶ福岡』を熟読していたことを…

福岡、再び。その2に続く

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