『ホワイトデーは3倍返し』
世間一般ではそう言われているらしい。
カモ先生は悩んでいた。
そう、今年ガッキーからもらったバレンタインデーのチョコレートがこれだったから…。
バーン!!!(カモ先生のロマンティックが壊れる音
バレンタインデーにもらった、みのりさんの手作りチョコ(謎の変死体)…。
カモ『これの3倍返しとか…もう青木ヶ原の樹海に潜入するしかないだろ…』
一体、何をお返ししたら喜ぶんだろう。現金または与信以外で
まさかみのりさんから手作りのチョコ(市販品を組み立てただk…)をもらう日が来るとは思わなかった。
適当にGODIVAとかロクシタンのハンドクリームを買っておけば良い時代は終わった。
そう、今年はカモ先生の『誠意』が試されている!!そう思った。
みのりさんが手作りだったから、自分も手作りでお礼をしようかと思ったけど、それは思いとどまった。手作りの3倍返しとか、全然想像がつかないし…。
そして何より、カモ先生が料理をすると事故る可能性が高い。
大学時代、同級生と鍋パーティーをしたときに、自分が学校近くの川で取ったでっかいカニを入れたせいで複数の嘔吐・下痢患者を輩出した記憶がよみがえった。
カモ 『うん…何か実用的なものにしよう…』
そう思って、みのりさんに前もって質問してみた。
カモ 『みのりさん、何か欲しいものってありますか??』
みのり『え…欲しいもの…ですか??』
みのりさんは、お金関係のエグい本を読むのをやめ、こっちを見ながら言った。
カモ 『はい、現金と僕の与信以外でお願いします』
みのり『うーん…それ以外だと難しいですね( ◠‿◠ )』
カモ 『でしょーねwwww』
みのりさんにこの手の質問をするのは、ライオンに『お肉以外に食べたいものありますか?』と尋ねるのと同義だった。
みのり『もしかしてホワイトデーとかですか??』
カモ 『Σ(゚ロ゚😉そ…そうです』
そして、いきなりバレた…。
さすがにこの時期に直接本人に聞いたら気づかれるよね…そう思ったけどしょうがない。
みのり『それだったら大丈夫ですよ!!カモ先生が元気でいてくれたらそれで良いです///』
カモ 『えっ…』
みのり『だから、カモ先生が元気でいてくれたらそれだけでいいですよ(*´∀`*)』
そうだった、みのりさんは本当は優しい子だった。
いつもサイコパスみたいな扱いをしていたけど、本当は違う。
純粋で真っ直ぐで、思いやりのある女の子だった。
みのり『あのお菓子、雪見だいふくにポッキー刺しただけですし♪』
カモ(だろうなwwwwww)
みのり『でも、どうしてもカモ先生がお礼をしたいって言うなら…』
突然、みのりさんは優しく笑ってこっちを見つめてきた。
みのり『カモ先生にちょどいい感じのワンルームマンションがあってですね…』
カモ 『えっ…』
この人…
バレンタインのお返しにワンルームマンション押し込もうとしてるの??
この子、正気なのかな??
カモ『あの…ホワイトデーにワンルームマンション買う人っていませんよね…しかも中古…』
みのり『ちがうんです!!たまたま、本当たまたま良い物件が出たんですよっ!!』
みのりさんが『たまたま』というと、なぜかムラムラした。
もっと『たまたま』と言わせるにはどうしたら良いか走馬燈のように考えた。
カモ『でも与信まだ回復してないので買えませんよ??』
突きつけられる悲しい現実。
みのり『それが!!今回はずばり、低価格なんですっ!!』
カモ 『低価格??』
みのり『ずばり!!180万円!!』
カモ 『…。それって…絶対ボロいか事故物件ですよね…』
みのり『違います!!あえて言うなら、狭いですっ!!』
カモ 『そもそもお金がないですよ??』
みのり『カモ先生…カードローンの返済、順調ですよね??』
カモ 『いやいやいやいやいや!!』
現在、カモ先生の給料のほとんどは、物件のローン返済(手出し)と、
このカードローンの返済に当てられていた。
みのり『もうすぐ残高250万円くらいですか??』
カモ 『えっ…何で知ってるんですか?Σ(゚ロ゚;)』
確か残債は259万円くらいだった。この誤差で当ててくるとか、なにそれこわい。
みのり『もちろんしっかり把握してますよ??( ◠‿◠ )』
まずい、これは非常にまずい状況。
みのり『カモ先生??××銀行のカードローン、枠は全部でいくらでした??』
カモ 『は…800万円です…』
みのり『それで…現在のご利用残高は??』
カモ 『259万円です…』
みのり『今の利用可能枠は??』
カモ 『540万円くらいですかね…』
みのり『っていうことは…』
みのり・カモ『いけますねっ!!』『逝けますねっ!!』
いやいやいやいやいやいや!!
カードローンで物件買うとか、絶対良くないって!!
死んだおばあちゃんが言ってたから!!
『カードローンでワンルームマンション買ったらいけない』って!!
みのり『大丈夫ですって!!』
カモ 『なにその根拠のない自信wwwww』
みのり 『カモ先生、カードローンの金利はいくつですか?』
カモ 『それは…さ…3.5%です…』
みのり『今回の物件は表面利回り18%ですっ!!』
カモ 『まじでk??』
みのり『まじですっ!!』
カモ 『それは…事故物件??それともヤバイ人が住んでる??』
みのり『ふっふっふっふ…聞いてびっくりしないでくださいよ…』
みのりさんが無駄にもったいぶった顔をして言った。
みのり『カモ先生、ワンルーム3戸買った時のご夫婦覚えていますか??』
突然、すごく懐かしさとともに、哀愁を伴った記憶が蘇った。
カモ 『確か重要事項説明中に3戸目を売りつけてきた面白い老夫婦ですよね??』
みのり『そうですっ!!』
当然覚えている、同じ人からワンルームマンションを3戸買うとか、
普通の人生(正常な思考)ではあり得ないことだと思うし。
みのり『その老夫婦から売却したいって連絡をいただきました!!』
カモ 『元気にやっているんですかね(絶対リア充していると思うけど』
みのり『元気に過ごされているみたいですww』
カモ 『でしょーねwwwww』
懐かしさと同時に、疑問がわいた。
カモ 『でもなんで急に連絡が来たんですか??』
みのり『それが、どうしてもカモ先生に売りつけたい物件があるって言ってました』
カモ 『何そのご指名wwwっww売りつけたいって…心の声漏れすぎだろ…』
みのり『本当、面白いご夫婦ですよねwww』
カモ 『でもなんで僕を指名してきたんですかね…』
みのり『面白かったからじゃないですか??カモ先生、年賀状とかお土産を送りつけたりしてましたし…』
そういえば、老夫婦の家に無断で色々送りつけていた。
出張で県外に行った時のお土産とかお歳暮とか、独り言みたいな一言を添えて送っていた。
そして年賀状は、みのりさんと一緒に書いて送っていた。
みのり『カモ先生が送ったお土産とか、すごく喜んでいましたよ♪』
カモ 『それで今回、安く売ってくれるんですかね…』
みのり『そうじゃないですか??もともと資産整理するって仰ってましたし』
カモ 『計画通りっ!!!!!』
そう、こうした高齢の夫婦は息子のように年齢の離れた人から優しくされると、息子の姿とかぶってしまい、まるで家族のように感じてしまう、そう!!これがオレオレ詐欺イリュージョン!!
みのり『うわぁ…(ドン引き』
カモ 『いやいやいや!!冗談ですよっ!!!!!』
っていうかよく考えたら、
みのりさんはもっとひどいことを僕にたくさんしてるよね??
みのり『でも、どうしますか??カモ先生…』
話を逸らすかのようにみのりさんが言った。
みのりさんは、物件の情報が書かれた書類を見ながら言った。
カモも一緒にその資料を眺めた。
#9.高くついたホワイトデー(1R)
(物件)中古分譲マンション(1戸)
(構造)鉄筋コンクリート(RC)
(築年月)築34年
(タイプ)ワンルーム(1K)
(価格)180万円
(表面利回り)約20%
(実質利回り)約15%
(特記事項)オーナーチェンジ物件:長期賃貸中
カモ 『確かにこれは割安だと思いますが…本当に大丈夫なんですかね??www』
みのり『手の込んだトラップの可能性もあるってことですか??』
カモ 『ですっ!!』
みのり『だったら…多分もっと金額が大きなやつをぶつけてくるんじゃないですか??』
カモ 『確かにwwwww』
みのり『それに、バリューセットの物件(3戸)もカモ先生が買ってからずっと満室で利回りも15%以上で回ってますし…これはもう騙されても良いんじゃないですか??』
カモ 『しかもこれだけの条件を出してくれてるなら…買わないと失礼ですかね…』
みのり『ですっ!!』
またいつものような感じになってきた。
みのり『事故物件ではないですし、しばらく修繕も必要なさそうですよ?』
カモ 『まぁ…また働けばいいんですよね…』
みのり『です!!また当直増やせばいいじゃないですか♪』
え…ちょっとまって…
今すでに週に5日当直してるんですけど…
みのり『まだ…2日あります…』
カモ 『まだ2日』
みのり『まだ2日』
そんなわけで、バレンタインデーのお返しに中古ワンルームを購入することになりました(白目
久しぶりの物件購入っ!!(与信復活してないけど
胸が躍ります!!(動悸