#84. ハッピーハロウィン(後編)

電話するカモ

みのり『カモ先生、おつかれさまですっ!!』

おそるおそる電話に出ると、いつもの脳天気な第一声が聞こえた。

カモ『みのりさん…残念なお知らせがあります』

ツライことは先延ばしにしてもしょうがない。後になればなるほど、ツラさに利子がついてどんどん事態は悪い方向に行くということは今までの人生で嫌と言うほど学んでいた。

カモ『融資が下りませんでした!!』

みのり『えっ!?』

カモ『融資が下りませんでした!!』

もう言い訳しようがなかったので、壊れたファービーのようにとりあえず繰り返してみた。

みのり『もしかして与信復活ならず…ですか??』

カモ 『はい、仰る通りです』

なぜか上司に対する口調のように答えた。

そう、カモはすでに自らの経済的生殺与奪の権利を譲渡していた。

みのり『それは…しょうがないですよねっ!!』

え…なにこのあっさりとした印象。

カモ 『い…いいんですか…』

みのり『しょうがないです、また前向いて一歩一歩しっかり歩いて行きましょ♪』

想像していなかった、前向きな発言。

カモ 『ほ…保証会社を間に入れると融資は下りるらしいんですけど…』

みのり『それはダメです!!この前の福岡の物件みたいに、保証会社を入れたら利回りが落ちちゃいますし、そこまでしてカモ先生に買って欲しくないですから』

そういえば、以前福岡の物件を購入した時、地銀は保証会社を挟むことを勧めてきて、みのりさんと白鳥が辞めた方が良いと地銀にかけあってくれたんだっけ…。

カモ 『ありがとう、本当ありがとう』

カモを搾取するために、保証会社を使ってでも物件を購入することを勧めてくるんじゃないかと思っていた自分が、すごく恥ずかしかった。

カモ『でも…ショックじゃないんですか?』

なんとなく聞いてしまった。

みのり『ちょっとは残念ですけど、しょうがないですよっ!!カモ先生が頑張ってるのは知ってますから♪』

不覚にも泣きそうになった。

カモ 『てっきり…捨てられるかと思っていました』

つい本音が出てしまった。本当にそう思っているわけではないけど…どうしてもぬぐえない不安な気持ちはあった。

みのり『そんな考え、1割くらいしか考えませんでしたよ( ◠‿◠ )

カモ (えっ…1割って大きくない??大きいよね?????)

サクッと言えちゃうのは何故…

なにこの無自覚サイコパス…。

笑いながら答える、その優しい声。そんな声にカモは怯えた。

みのり『またしっかり稼ぎましょ♪』

えっ…これ以上??って思ったけども、次の瞬間

カモ 『はいっ!!』

と僕は迷いなく、一切の曇りなく答えていた。

もっともっと働く!!

みのり『そうそう、今年のクリスマスとお正月はガッツリ働きましょうね♪

カモ 『もっと働k…えっ…!?』

みのり『え?じゃなくて”はい”ですよ( ◠‿◠ )』

デジャヴュ。夏にもこんな光景があったような。

あの時は浴衣にうなじというわっふるわっふるなみのりさんが見れたのに。

ソウルジェムは、魔法の使用以外にも、恨みや嫉み、怒りや絶望などの負の感情でも穢れるらしい。さっきまで一切の曇りなく透き通っていた僕のソウルジェムが、今この瞬間に、絶望という一つの感情だけで真っ黒に濁った。

本当もう絶望しかない。

カモ 『クリスマスはみのりさんと一緒に過ごそうと思ってt…』

みのり『労働は尊いですよねっ!!(キリッ』

カモ 『で…でもほらっ…性…聖夜ですし…』

みのり『カモ先生、ほら、今はメリクリよりもクリアゲですよ!?』

カモ 『訳が分からないよ、”クリ”しか合ってないし…』

みのり『そもそもカモ先生、クリスマスにエッチなことしか考えてませんよね…』

カモ 『ぐぬぬ…』

つらい、ローン返済つらい。

こうしてカモ先生のクリスマス(とお正月も)病院で粛々と当直生活になった。

幸せなカップルは、クリスマス当日に魔女化しながら働くかわいそうな人がいることを少しでも思い出して欲しい。いちゃいちゃカップルはクリスマスケーキで誤嚥性肺炎になる呪いをかけておいたぞ!!

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