#75. 花火大会〜リア充の夏っ!?〜(後編)

ぐぬぬ・・・。

花火大会当日。

夕方、仕事を速攻終えて家に急いで帰った。

カモ(当直?なにそれ美味しいの?)

こんな気分になったのは初めてかもしれない(すっごい借金があるのに…)

みのりさんの浴衣姿なんて想像できなかった。
そもそも本当に来るんだろうか…、疑心暗鬼この上なしの精神状態だった。

『ピンポーン』

待ち合わせの10分前にインターホンが鳴った。

カモ『来たっ!!』

飼い主を待っていた飼い犬のように、ドアに向かってフローリングを滑りながら走って向かった。

急いでドアを開ける。
ドアの向こうに、淡い青色の浴衣を身に纏ったみのりさんの姿がそこにあった。
髪も緩めのアップでまとめられ、いつもにも増して すごく可愛くなってる。

みのり『あの…変じゃありませんか…??』

いつものように、うつむき気味に恥ずかしそうに言った。

カモ 『えっ…最高に可愛いと思いますっ!!』

大型犬がしっぽをぶんぶん振ってお座りしているように見えたと思う。
今だったらどんな契約書にだって印鑑を押す自信があった。

カモ 『じゃあ、行きましょう!!』

花火が見える川辺まで10分程歩く。
隣には浴衣姿のみのりさんがいる。川辺までの道すがら同じように浴衣を着た女性がたくさんいた。病院に引きこもっていたので気づかなかったけど、世間はもう、夏真っ盛りだった。カモは視界に入るリア充達は排除していたことをすっかり忘れていた。

みのり『この辺に座って見ましょうか♪』

カモ 『はいっ!!』

広い川辺に、レジャーシートと途中の屋台で買った戦利品を広げて、二人で座って花火を待った。

みのり『なんか緊張しますねw』

カモ 『僕はもっと緊張してますよっ!!』

カモが笑うとみのりさんも笑う。

ゆっくりと夜の闇が周りを包み込み、周囲はすっかり暗くなっていた。

まさか自分もこんな夏を過ごすとは思っていなかった。
与信もなくて物件も買えない状態だったので、夏が来る前に捨てられるかもしれないと思っていた。夏らしいリア充な夜をくれたみのりさんには感謝しかない。

みのり『カモ先生、もうすぐ始まりますよっ!!』

子どものように、ワクワクした声調で自分の方を見つめて、そっとカモの手を握る。
その小さな手をそっと握り返す。最初は壊れそうな程小さな手に感じていたけど、今は安心して握ることが出来るようになった。

アナウンスの後に、大きな拍手と歓声が上がり、花火が上がった。

花火

花火の閃光で、隣で穏やかな表情で花火を見つめる浴衣姿のみのりさんの姿が浮かび上がる。花火が発する瞬間瞬間の光に照らし出されるみのりさんのうなじに、カモはドキッっとした。

うなじは日本の伝統文化!!

ストロンチウムやナトリウムが織りなす化学反応によって照らし出されるみのりさんの横顔は美しかった。カモはそんなみのりさんの姿をずっと眺めていた。主にうなじを

以前は、金属の炎色反応なんか見て何が楽しいのか全く理解出来ていなかったけど、古くは室町時代から伝わるこの花火文化は素晴らしいと思う(テノヒラクルー

今まで生きてきて気がつかなかったけど、

どうやら花火大会という儀式は、純粋に花火を見るだけじゃなかった!!(手遅れ

遠く、遙か頭上で火薬が爆発する音。

花火の爆発音と自分の鼓動の音が重なる。

みのりさんが照らし出されるたびに、握った手が動くたびに、ずっとドキドキしていた。

5分見たら飽きていた花火が、みのりさんといるとあっという間に、時間が過ぎる。

この時間がもう1週間くらい続けばいいのにと思った。

花火を夢中で眺めるみのりさんの横顔を見つめていたら、目が合った。

恥ずかしそうに微笑む。

ずっと、毎年こうやって花火大会を楽しんでいけたら…

そう思った3秒に、突然それは襲ってきた。

みのり『カモ先生…ちょっとお願いがあるんですけど…』

カモ 『えっ…』

カモにとって、それは幸せなお願いかもという考えがよぎらなかったのは懐柔(調教)されてるサイン。すでにカモは十分調教されていたと思っていた…

が、彼女と花火大会という経験したことないリア充イベントに、

この瞬間、カモ先生はすっかり忘れていた。

忘れているどころか…カモ先生、ちょっとワクワクしていた。

でも、よく考えろ!!いつもそうだったじゃないか…。

そう、これは完全に仕組まれた罠だっ!!

『上げて堕とす』

これがみのりさんの、いつものパターンじゃないか…

カモ(くそっ!!花火は餌だったか…)

恐る恐るみのりさんの顔を見る…

相変わらず、満面の笑顔…サイコパスなのかな??( )

みのり『あの…この前言ってたじゃないですか…』

カモ 『この前…??』

何のことかすぐに思い出せなかった。

みのり『祝日は病院が休みだから、一緒に遊びに行こうって??』

カモ 『あ…うん』

そう言えば、祝日は仕事が休みになることが多いから、『どこか小旅行に行こう』って誘ったことを思い出した。

カモ(えっ!?まさか、その誘いっ!?デートの催促っ!?一緒に露天風呂付き客室のある温泉デート(無駄に具体的)のお誘いっ!?)


もしかして…これは罠じゃない!?

カモは舞い上がった。とうとうみのりさんにカモの純愛が伝わっt…

みのり『祝日にも当直をしましょう(*´∀`*)』

カモ 『えっ…』

みのり『祝日に当直をしましょう(*´∀`*)』

えっ…この人はなぜ2回も同じ事を言ったんだろう…

みのり『この前、地銀の支店長も言ってたじゃないですか??もう少しで与信回復出来そうって(*´∀`*)』

カモ 『あれはどうみても社交辞令ってやt…』

みのり『そんなことありませんよっ!!支店長の目は曇り無き眼でしたっ!!』

なにその曇り無き眼って…どうみても最近見たもののけ姫の影響でs…

みのり『もうひと踏ん張りしましょ♪』

今、カモを見ているみのりさんの眼に曇りが無さすぎて逆に怖い…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

カモ 『いやいやいやいやいや!!無理無理無理無理かたつ無理だって!!もうカモ先生のアクセルはべた踏み状態だって!!』

1週間に5日当直しているカモ先生にとって、心のオアシスである祝日に日当直を入れるということは、アクセルべた踏みしている足の上からコンクリートブロックを置く行為に等しい。

みのり『大丈夫ですよっ!!祝日だけですからっ!!ほらっ!!』

カモ 『いやいやいやいや!!その先っぽだけ!!みたいなの、信じたらあかんやつだって!!』

みのり『下ネタは禁止ですヾ(○`з´)ノ』

カモ 『あかんって!!みのりさんとデート出来なくなるじゃないですか!?』

カモはいつものように必死だった。

みのり『そこは大丈夫ですっ!!ちゃんとお弁当持って会いに行きますから♪

カモ『えっ!?』

みのりさんはにっこりと笑っていた。

その笑ったときに細くなる目は、僕が過労死する未来図は見えているのだろうか。

カモ 『お弁当って…手作り…ですか??』

みのり『もちろん、カモ先生のために作ります♪』

カモ 『もやし…だけ…とか??』

みのり『ちゃんとした御弁当ですよっ!!お肉も入れちゃいますよっ!!』

カモ 『まじでかっ!?』

みのりさんが会いに来てくれる。

しかも手作り弁当付きでっ!!

これは悩む…。

そもそも、心のオアシスである祝日を無くしてまで与信を回復させる必要はあるんだろうか…。

自分は一体何のために生きているんだろうか、この哲学的問いをまさか彼女との会話の中で意識することになるなんて、ソクラテスもきっと想像出来なかっただろう。いや、そもそもこれは生きていると言うより何者かによって生かされているといった方が良いのではないか…

そんなことを考えている間も、ドーン、ドーンと前方斜め上方向から花火の音が聞こえてきた。

でも、今は花火どころではなかった。カモ先生は、もっと大切なことで悩んでいるのだ。

みのり『私も…さみしいんだからね・・・』

小さな声でみのりさんがつぶやいた。

何だろう、胸の奥がキュンってした。心筋梗塞的なやつではなく

そして次の瞬間、口から言葉が飛び出していた。

カモ 『わかりました!!与信が回復するまで祝日も働きます』

みのり『カモ先生、一緒に頑張りましょ♪♪』

カモ 『ハ─。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚─ィ☆』

2018年夏、カモ先生のカレンダーから祝日が消えた。チャドの霊圧のように

カモ先生の霊圧が…消えた…?

判断力の欠如…。病院では冷静に判断することを求められるが、みのりさんに対してはリスクマネジメントは出来ず、冷静どころかいつも契約書に判子を押し続ける水飲み鳥のような状態だった。

当直先に、みのりさんが手作り弁当を持って来てくれる。
心が躍った・・・躍ったが、これで良いのだろうかと本気で悩んだ。
祝日をなくして、日当直を増やしたくらいで与信は戻るんだろうか・・・。

疑心暗鬼というよりも、与信暗鬼になっていた。

気がつくと花火大会は終わろうとしていた。

周囲に散在して座っていたカップルや家族連れも徐々に動き出していた。

花火大会が終わる、それは夏が終わることを暗に意味していた。

みのり『みんな帰り始めましたね・・・』

カモ 『僕らも帰りましょうか?』

そう言って、みのりさんの方を見ると、みのりさんと目が合った。

みのり『せっかくだから、もうちょっとこうしていませんか?』

みのりさんはカモの手を握ったまま視線を空に移した。

カモ 『花火きれいでしたね』

みのり『カモ先生が来てくれて本当に良かったです///』

カモ  『何突然っwwww』

普段見せない、含みのある言い方、意味深な表情に驚いてしまった。

みのり『カモ先生、付き合って1年経ちました。私はちゃんとカモ先生の彼女としてやれているでしょうか・・・』

落ち着いた声。でもその言葉の中に、彼女なりの不安や緊張が確かに伝わってきた気がした。

カモ 『僕はこの1年間、幸せでしたよ!!むしろ仕事ばかりでみのりさんに辛い思いをさせてないかと思ってばかりです…』

みのり『そんなことないですよっ!!』

そう言ってみのりさんは首をぶんぶん横に振った。
かわいい、本当かわいい。

みのり『私の方こそ、カモ先生に辛い思いばかりさせてしまっているような気がしてます』

そんなことないですよっ!!って言いそうになったが、10分ちょっと前のことを思い出して、『本当その通りですよねっ!!』って言いそうになった。

カモ 『僕は仕事が好きですし、みのりさんがいてくれたらすごく頑張れる気がするんです…。』

みのりさんは黙って聞いてくれている。

カモ 『だから、これからもずっと僕のそばにいてくださ…』

突然、自分の唇にみのりさんの唇の感触が伝わった。
同時にふわっといい匂いがした。みのりさんの横髪が夜の風に泳ぎ、まるで顔を柔らかい絹でなでるような感覚がした。浴衣の上からそっと抱き寄せると、恥ずかしそうに笑った。

みのり『これからもよろしくお願いします///』

そう言って、僕たちはもう一度キスをした。

【イメージ図】

キスシーン(イメージ図)

【現実】

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