#-27. 面接試験(中編)

それは・・・

スタッフの人に名前を呼ばれ、部屋の前まで案内された。

ノックをして室内に入る。前期で受かれば最後になる試験。

気持ちは高ぶっていたが、覚悟は決まっていたせいか、比較的穏やかな気持ちだった。『よしっ!!』と心の中でつぶやき、ドアを開けた。

ドアの向こうは、異常に緊張した空気が張り詰めていた。

面接試験会場

間違えた。

これは医学部に受からなかったら受験する予定だった方の面接だ。

実際はこんな感じで、試験官は4人いた。

面接試験(前期)

面接官は、宮崎駿、エヴァの碇ゲンドウ、マスオさん、幻海師範に似た4人。

宮﨑駿先生碇ゲンドウ先生マスオ先生幻海師範

どの人も、マジメな顔をしていた(当たり前だけど

カモ (この人達を笑わせるとか…かなりハードル高いんですけど…)

一瞬、そう思ったけどすぐに頭を切り換えた。

面接モード。ここからは、聞かれた言葉を即座に理解し、正しい解答を出し、敬語と声の調子を調節しながら、スムーズに自信を持って堂々と話す作業に徹する。そして隙あらば積極的に笑わせに行く!!

着席するように促され、着席して一呼吸置くと面接が始まった。

面接 『試験はどうでしたか?』

カモ 『絶頂と絶望を両方味わいました』

面接 『絶頂ってwwwww』

宮崎駿を強面にしたような試験官が、にやっと笑った。

よしっ!!1人ゲット!!

残り3人!!

さい先の良いスタートだと思った。

面接 『どの科目が一番難しかったですか?』

カモ 『数学ですっ!!確率の計算で手こずってしまいました・・・』

面接官の話し方は丁寧な印象で、碇ゲンドウ以外は穏やかな顔をしていて、カモの言葉に、『うんうん』とうなずいてくれた。

面接 『将来、どんな医師になろうと思っていますか?』

ありきたりな質問。

よくある参考書や予備校のテンプレートだと、『産婦人科医、外科医、小児科医、僻地の勤務医を希望しています』と答えるのが正解と書いてある。どの診療科も医師の数が不足しており、早急な医師確保が必要とされているからだ。

ただ、この答えは本当に教科書通りだった。

医師になった後、過去に面接官をしていた上司と話した時、受験生の8割が産婦人科医、外科医、小児科医、僻地の勤務医のどれかを希望していると答え、面接官はその度に『お前もかブルータス』となったと言っていた。契約書にサインするわけでもなく、議事録を録られているわけでもないので、受験生はみんな平気で嘘を言ってくる、そうした答えを聞くと面接する方はテンションが落ちると言っていた。

カモ 『まだ決めていません』

カモは自信を持って答えた。さぁ、演技のスタートだ。

面接 『まだ…決めてない…だと!?』

面接官達は、ちょっと意外そうな顔をしていた。

カモ 『自分は、両親が医者でもなければ、小さい頃から医者を目指していたわけでもありません。高校卒業後、友達を見返したいからという単純かつ不純な動機で医学部を目指しました。予備校に通い、1年目のセンター試験で挫折をし、もう1年勉強して今ここにいます。この2年半の間、自分は予備校で色んな先生に出会いました。その中でも、英語の先生との出会いは、自分にとって非常に貴重な出会いで、学力だけでなく医学を志す受験生として、そして人間として成長させてもらいました。ですが、医学に関してはまだ何も教わっていません。この大学に合格し医学生になることが出来れば、学問に励み、先生方から学び、先生方との出会いを大切にして、自らの適正なども熟考して、自分なりの理想の医師像というものを探していこうと思っています』

聞かれると思って想定していた質問、前もって準備した原稿通り暗唱した。

面接 『なるほど…良い出会いがあると良いですね』

真面目なそうな意見に試験官はうなずいている様子だった。

しかけるポイントはここっ!!

カモ 『はい、出来れば人生の伴侶とも出会いたいですっ!!

面接 『wwwwwww』

面接官の宮崎駿とマスオさんが笑った。

残り2人っ!!

宮﨑駿は視線が合う度、すごく優しい笑顔をくれる。その一方で、碇ゲンドウと幻海師範はピクリともしていない。この2人は手強い、そんな嫌な予感がした。

面接 『高校を卒業してからは何をしてたの?』

これも想定した範囲内。絶対聞かれると思った。

カモ 『スーパーで魚を売ったり、熱帯魚屋で魚を売ったりしていました』

面接 『魚好きなんだねwwww』

宮﨑駿がニコニコしながら言った。

優しいっ!!さすがラピュタの生みの親っ!!

カモ 『はいっ!!観るのも食べるのも好きです!!』

宮﨑駿とマスオさんが笑った。笑いの閾値が下がっている、この2人は完全にカモに対する警戒が解けていると考えて良いだろう。だが、碇ゲンドウと幻海師範はピクリともしない。不感症なのかな??

この先も、あらゆる質問を想定し、予備校で練り上げた原稿が頭の中にインプットされている、言葉も引っかからずに出る、大丈夫だ…そう思った矢先、突然意表をつかれた。

ゲンドウ『熱帯魚は何の魚が好き?』

カモ 『えっ…』

面接官『えっ…』

何この質問っ!!!!!????

意外だった。ゲンドウがまさかの熱帯魚に食いつくとは…

熱帯魚といっても、グッピーからアロワナまで種類は様々だ。

そもそもこのゲンドウは何故こんなことを聞くのか。一瞬パニックになった頭を必死に回転させる。

可能性としては、

1.嘘をついていないか、具体的な内容を聞いて確認するため

2.天才タイプの人間によくある、ただの気まぐれ

3.自分も熱帯魚が大好き、または現在進行で熱帯魚を飼っている

が考えられた。どの可能性にしろ、ここは確実に答えないと、詰む。

面接官の盤外からの質問(一手)…!!

返答を誤れば”落ち(詰み)”ますよ・・・・?

シャウアプフからの一言

シャウアプフの声が聞こえた気がした。

すごく悩んだ。ここは賭けに出るしかないのか。いや、でも熱帯魚の話題自体がすでにギャンブルになっている状況。ここは慎重に行くべきか…。

マニアックな答えは避け、なるべく広く浅くかつ素人すぎない答え。

これしかない…。

カモ 『一番は…コリドラスですかね…あのヒゲが最高に可愛いと思います』

広がる沈黙…。

怖くてゲンドウの顔が見れない。

コリドラスはちょっとマニアック過ぎたか…もしかしたらグッピーが正解だったかも…

ゲンドウ『ふふっ…わかる…』

碇ゲンドウ、笑う!!

恐る恐るゲンドウの顔を見ると、碇ゲンドウはめっちゃ笑顔になっていた。

眼鏡越しに、めっちゃ目がにやけていた。

よくわからないけど、何か通じたっ!!

ここまで来たら、もう…

のっかるしかない!!

カモ 『先生は…どんな熱帯魚がお好きなんですか?』

他の面接官を置き去りにするかもしれないと思ったけど、ここはチャンスだと思った。恐らく碇ゲンドウは熱帯魚を飼ってて、しかもかなり好きなはずっ!!

『コリドラス』という一般人からしたら、『なにそれ??』という単語に対して笑顔を見せた。あの笑顔は絶対、熱帯魚オタクが見せる笑顔だ(超偏見。

ゲンドウ『私はね…プレコが好きなんだよ』

きたあぁあぁああああああ!!!

この瞬間、勝利を確信した。

プレコもコリドラスと同じ、ナマズ目だ!!

絶対にカモに親近感を持ったにちがいない!!

ここはしっかり食いついていく。

カモ 『私はインペリアルゼブラプレコが好きで、バイト先で毎日眺めてました』


ゲンドウ『あぁ…そいつは最高だ。私も初めて見たとき、衝動買いしたよ』

まさかのゼブラ好きっ!!白と黒が好きな人に悪い人はいない(下着の色的な意味で

まさかここで趣味が合うとか…面接室に受験の神様が降臨した。

カモ(離してたまるかっ!!ここで碇ゲンドウの心を掴むっ!!)

カモと碇ゲンドウ先生は熱帯魚トーク(ほとんどプレコ)に夢中になった。

面接 『あの…碇先生、面接を続けても良いでしょうか…』

プレコトークで盛り上がってた所に、宮﨑駿が笑いながら困ったように流れをもどした。

碇ゲンドウ『あぁ…すいません。つい…』

さっきまでニッコニコだった碇ゲンドウ先生は、おもむろに我に返ったように真顔に戻った。

だが、彼はこっちの手中に堕ちたのは間違いない。

カモ『ようこそ、熱帯魚ワールドへっ!!』

熱帯魚にようこそっ!!

こうなったらもう、碇先生は警戒どころか、今すぐにでもまた熱帯魚トークをしたいと思っているにちがいない!!

今までの流れで、3人の警戒は解けたと思う。

面接が始まって、どのくらいの時間が経っただろう…。

部屋の中は、静かで面接官が紙をめくる音が響いていた。

笑わせないといけない面接官はあと1人…。幻海師範っ!!

カモ (ただ幻海師範はどうやって攻略する…??)

面接 『カモ君、この大学を卒業して、その先は考えていますか?』

この質問も想定内。この質問、何が言いたいのかというと、

『この田舎で医者をしてくれますか?』ってことだった。

つまり、『田舎に忠誠を誓えますか?』っていうこと。

もっと言うと、

『君、卒業したらどうせ都会に行っちゃうんでしょ?そんな人は落とすよ??』

って聞いている質問だった。

当然、ここでの正しい答えは、『母校(田舎)に残る』だ。

他の受験生も、当然『僻地医療がしたい』、『田舎が好き』、『母校に尽くしたい』と答える(みんなほぼ嘘だけど)

ここでも、自分は攻めるしかない。面接官に気に入られなければいけない自分には、ありきたりの嘘を言ったってダメだ…。

カモ 『先程のお話と被ってしまいますが、大学在学中に先生方との出会い、学問との出会いがあれば、この受験生活二年半と同様、本気で向き合っていこうと思います。その過程で、もしこの地域や大学が自分を必要としてくれたり、先生が自分のことを考えて、判断してくださった場合には、そうした縁を大事にして生きていこうと思います。自分には継ぐべき病院もありませんし、両親は自分に対して、好きなように生きなさいと応援してくれているので(笑』

面接官はうなずいてくれている。

面接 『在学中は何をしたいですか?』

カモ 『医学をしっかりと学び、自分がどういった医師になるべきなのか、しっかり向き合っていこうと思います。あと…お金がないのでアルバイトをしようと思っています』

ゲンドウ 『熱帯魚屋で?』

碇ゲンドウ先生による、鋭いボケが入り、面接官が笑った。

碇ゲンドウ先生、もう完全にこっち側の人間、カモ先生のために面接官側に潜り込んだスパイのような状態になっていた。

幻海師範もそれに釣られて笑って…笑ってないっ!!\(^o^)/

ちょっと口角が上がっている雰囲気だけど、目は笑っていない…。

いけると思ったのにっ!!

面接 『サークルとかはしないの?』

カモ 『サークル活動で先輩方や同級生と親交を深めることも大切かと思うのですが、自分は医学について、勉強してみたいと思っています。そして興味のある医学については積極的に学ぼうと思っているので、どちらかというとサークルよりも医局や先生方のところに遊びに行きたいです』

予備校講師からの指示通り、まじめかつ人懐っこい印象操作を徹底的に行う。

『面接は、嘘をつく場ではなく、演じる場ですよ』と教えてくれた先生。解答のシミュレーションは、明らかに詐欺だろうと思う内容だったけど、それを徹底して演じた。

『合格してから、医大生になってからその理想に近づけば良いんですよ』

いや、絶対無理でしょwwwww

これ以上勉強したら死んじゃうってっ!!!!

そんな面接対策の授業も今となっては懐かしいと思った。



その後も、医療系の質問や医療倫理についての質問が続いた。

幻海師範だけは、ずっと笑わずにこちらを見ていた。

このまま行っても、恐らく面接は良い感じで終わるはず。

特にミスはしていないと思うし、問題なくやり終えることが出来る。

そうこのまま終われば、きっと大丈夫。

例え、幻海師範1人笑わなくても、失敗ではないし、他の面接官には良い印象を与えることが出来たはず。このまま後は平穏に逃げ切ろう…。

そう思った、それで納得したはずだった。

カモ(このまま幻海師範を笑わせられないまま終わっても良いのか??)

危険な発想が過ぎった。

いやいやいやいやいやっ!!

このまま笑わせられなくても、全く問題ないはず。

ここでリスクを冒す必要ってある??

ないでしょっ!!

ないでしょっ!!

でも…

でも…

どうしても幻海師範を笑わせたい…。

受験を通して、リスクはなるべくとらないように学んできた。
確実に、安全に、そして慎重に。2年間、身体に染みこませてきた受験哲学。

スベるかもしれない。それでも…最後までやり遂げたい。

最後の1人まで笑わせたい…

芸人カモ先生、誕生の瞬間だった(マテ

そして、そう決心した矢先にチャンスが来た。

面接 『最後に何か言っておきたいことはありますか?』

カモ 『あの…』

<面接試験(後編)に続きます>

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