#-23. 前期試験前日

かもねぎ先生幼少期

JRでの移動。移動中はずっとイヤホンで音楽を聴きながらノートを広げて勉強していた。テンションを上げる時の音楽はいつも決まっていた。Queenのフレディ・マーキュリーやリンキン・パーク、中島みゆき、尾崎豊の声を聞くとテンションが上がった。大好きだった曲、つらい受験時代を支えてくれた曲。今でも受験生時代に聞いていた曲を聞くと、辛かった受験時代を思い出して複雑な気持ちになってしまう。

いくつかのトンネルを抜けた。

トンネルを抜けると、そこは『雪国』だった…

みたいな感動はなく、トンネルを抜けてもひたすらただの山だった。あまりにも田舎だったので、特に感動もなく、勉強が捗った。問題を解くのにも疲れ、生命力が全く感じられない褐色の山々の風景を眺めるのにも飽きた頃、A大学のある県に着いた。

県で一番大きい駅とは思えないほど、駅は地味だった。あまりにも駅が地味だったので、降りる駅を間違えたのかと思った。現地に着くと、早速、会場の確認に向かう。道中車窓から眺める景色もまたひたすら同じ光景が繰り返された。人が住んでいるかも疑わしい家や、その地域特有の同じキーワードが入った看板が続いた。開店休業でないかと余計な心配をしてしまった。

戦場となる試験会場には、自分と同じ受験生が同じように下見をしていた。母親と一緒に来ている受験生もいれば、自分のように独りぼっちできている受験生もいた。

受験会場となる教室には入れなかったので、入り口を確認しただけ。大学生の姿はなく、広々とした校庭と古い校舎が静かにあるだけ。戦場とは思えないほど閑散としていた。十分下見をしたので、(といっても見るところはほとんどなかったが、)大学入り口に足を向けた。

さて…ホテルに向かおう、そう思った時、ふと視線に気づいた。

眼鏡姿の女子、ダッフルコートにマフラーを巻いた女子。

どっかで見たことある…、確か同じ予備校の同じクラスだった女の子。

地味な子だったのであんまり記憶になかったけど、確かに同じクラスの子だった。

ふと目が合った。少し恥ずかしそうにうつむいて、会釈をしてきた。

こっちもなんとなく、会釈をする。お互いに少しき気まずい空気を感じた。

もしこれがエロゲーだったら、間違いなくフラグが立っていただろう。

もしこれが村山春樹の小説だったら、ホテルに戻った後、突然部屋のドアがノックされて、良い感じになって、わっふるわっふるってなったはずだ。そしてその後、彼女はなぜか不可解に失踪するはずだ(村上春樹的な意味で

でも、当然そんなわっふるわっふるタイムなんてなかった。

これが現実っ!!(血の涙を流しながら



ホテルに戻っても、ひたすらノートを開いて勉強をした。
ホテルは、受験会場から少し離れた、繁華街の外れの安宿だった。カモにはもうお金がなかった。なるべく安い宿を探して見つけたビジネスホテルだったけど、幸いなことに机とデスクライトがあったので、勉強には差し支えがなかった。

ちょうど問題を解き終わった時に、ふと頭の記憶をかすめた。

同じ予備校だった、あの眼鏡の子が少し気になったけど、今はそれどころじゃなかった。

『あの子…、眼鏡取ったら別人のように可愛くなったり…』

雑念が浮かんだり消えたりした。

そう言えば、2年間の受験生活で恋愛を含め、人間らしさが全くなかったことを思い出して変な笑いがこみ上げてきた。本当に寝る間を惜しんで1問でも多く問題を解いた。受験勉強以外に何もなかった。

『男なら、たとえ、溝の中でも前のめりで死ね』

坂本龍馬の言葉だったか…いつも心の近くにあった言葉だけど、

『前のめりも何も、横向く余裕もねーよwwww』って思いながら受験生していた。

ここまでなんとか生き延びた。ここまで来たらあとは命を賭けてやるしかない。

気分が高揚して眠れないかと思ったが、ベッドの中に潜り込んだら自然と眠りに落ちていた。

あと数時間後には、戦場に向かう。

いよいよ、最後の戦いが始まろうとしていた。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告
レクタングル(大)広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. ぐる より:

    切なくもおもしろい。いいぞ!もっとだ!