#44. また福岡、そしてコロガルイシ(前編)

魂が抜けるカモ

久しぶりに、福岡に降り立った。また来てしまった。

夕方にも関わらず、前回来た時よりも気温が高くて蒸し暑い。

白鳥が迎えに来てくれると言うので、ヨドバシカメラの店内で待ち合わせた。

カモの住んでいる田舎と違って、ヨドバシカメラには何でも揃っていた。

大きなテレビ、最先端のパソコン。そういえば自分のパソコンもそろそろ限界が来ていることを思い出した。

白鳥『カモ先生っ!!』

白鳥が、今までみたいなスーツ姿ではなく、白いポロシャツ姿で現れた。

白鳥『お久しぶりです、来てくれると思っていましたよ。』

白鳥はカモの手を無理矢理掴んでぶんぶん振り回す。

カモ(やめて、肩が脱臼しちゃう)

カモ『えぇ、白鳥さんの掌で踊らされているかのように、また福岡に来てしまいました。』

白鳥『そんなことないですよ、あの時はカモ先生が来てくれたら嬉しいなと願望を口にしてただけです。』

白鳥は笑顔で恥ずかしげも無く、なんのいやらしさも無く、相手を喜ばせるような言葉を言う。このテクニックはヤバい。このテクニックを使って布団とかツボとか売れば儲かりそうだなと思ったが、金融とか不動産業界はある意味、布団とかツボより金額が大きいのでより効率的だなと思ったけど、闇が深いのでそっ閉じした。

白鳥『そうそう、カモ先生、そのアタッシュケースはやばいですよ、最近福岡は純金強盗が流行ってますからwww』

白鳥が自分の持っていたアタッシュケースを見て言った。

カモ 『そうなんですかっ!?そういえばニュースになってましたね…。』

白鳥 『今、福岡では純金ブームですからね、あちこちで純金のお店が出来てますし、アタッシュケース持っていると勘違いされて襲われちゃいますよww』

カモ 『さすが修羅の街、福岡…。』

そういえば、福岡駅の周辺でも金を扱うお店を数軒も見かけた。

どう見てもマフィアです、本当にありがとうございました的なお店もあった。

白鳥 『じゃあ行きましょうか。あ、ついでにテレビを買ってくるのでちょっと待っててください。』

カモ 『え…テレビを…買う??』

白鳥 『えぇ、今度の物件にテレビを備え付けようと思って』

カモ 『白鳥さんが…ですか?』

白鳥 『そうです、初期投資ってやつですかね、新しい仕事を振られて困っているんですよ』

そういえば、今までカモの物件は基本的に設備投資をほとんど行っていなかった。

テレビ、洗濯機、冷蔵庫、すべて住人の方の持ち込みだった。大家さんがテレビとか家具を提供することって案外多かったりするのだろうか。

そんなことを考えていると、びっくりするほど早く白鳥が戻って来た。

カモ『テレビ買ったんですか?』

白鳥『えぇ、買いましたよ。大体見当を付けてましたからw』

まるで、自動販売機で缶コーヒーを買うようにテレビを買った白鳥と、お店の出口に向かった。

タクシーを拾い、白鳥が指定する居酒屋に向かう。

タクシーの車内で、白鳥と二人。

車内では、白鳥が福岡の不動産事情や、金融の話、これからの世界経済についてなど、お金の話をしてくれたが、経済ど素人のカモには ちんぷんかんぷんだった。

白鳥は不動産取引だけでなく、株取引も趣味でやっているらしく、色々教えてくれた。カモも最近、ガッキーの影響で 株の口座を開いたばかりだったので、興味があった。白鳥先生は詳しかったので、色々聞けた。ちょうど、白鳥が買いまくっているXXXXXXXXという株の話をしていた所でタクシーが止まった。

白鳥『カモ先生、到着です。』

カモ『ここは…?』

居酒屋コロガル石

白鳥『居酒屋コロガル石です。ここ、美味しいのでよく来るんですよ、名前は変ですがwwさぁ行きましょう♪』

早速店内に入った。

テーブル席に座り、店長と白鳥が楽しそうに会話をする。

白鳥が生ビールを2つと刺身の盛り合わせ、あと適当にオススメを頼んだ。

すぐにビールが来る。

白鳥『さて、では早速乾杯しましょう。』

カモ『何に?』

白鳥『二人の再会に、そしてこれからの二人の未来にっ!!』

カモ『男同士のですかwww』

白鳥『何言ってるんですか、後半はかもねぎ先生とみのりさんのですよ』

カモ『えっ!?』

白鳥『とりあえずカンパーイ!!』

白鳥が勢いよく持ってたビールジョッキをカモのジョッキにぶつけてくる。

表面張力以上の力でビールが動き、ジョッキからビールがこぼれた。

カモ『か…かんぱーい』

相変わらず、 白鳥の行動が読めない。

白鳥『あ、今の乾杯は、僕の完敗とかけてたわけじゃないですからね!!』

カモ『上手いけどもwwww(本当にみのりさんを諦めてくれれば良いのに)』

福岡の熱さに当てられ喉が渇いていた。ジョッキ半分ほど飲み干す。

美味しい。

カモ『白鳥さんは、みのりさんのこと、あきらめたんですか??』

酔っ払う前に、大切なことを聞いておきたかった。そしてさっきの発言の意図。

白鳥『あきらめた…か。半分正解で半分不正解。』

カモ『どういうことですか?』

白鳥『僕はまだみのりのことが好きだよ、それはこれからもずっとそうかもしれない。でも僕には幸せにしなければいけない人がいる。ワイフだww』

カモ『確か、みのりさんの高校の時の先輩でしたよね?』

白鳥『そう、僕は人生をかけてこの人を幸せにすると誓って結婚した。みのりの魅力のせいで、危うく自分はその誓いを破るところだったけどね。』

店員が勢いよく登場し、目の前に刺身の盛り合わせが置かれた。

明らかに2人前以上の量だった。

お刺身二人前

白鳥『それでも良いと思った。自分の欲望に忠実に生きる人生もまた人生かなと。』

カモ『情欲に溺れている方が、人間としてリアルだ…。』

白鳥『加持リョウジ乙wwww懐かしいですねっ!!』

隙あらば、漫画やアニメのセリフを挟みたくなる、いい年になってもカモの中二病は治らなかった。

白鳥『でもね、みのりに言われたんだよ。自分の心は決まっているってね。それは僕とは一緒にならないことであり、そして…カモネギ先生、君とも一緒になれないと…。』

白鳥はいつものように不敵に笑っている。

ただ、笑顔のその奥では希望と絶望が入り交じったようなどろっとしたものがあるような、何かとてつもない企みがあるのではないかと思わざるを得なかった。

カモ『それはどういうことですか?』

白鳥『まず、福岡に来てくれたお礼として、この前の僕が言わなかった話をしましょう。みのりは、君のことが好きだ。』

カモ『本人から聞いたんですか?』

白鳥『そうですよ、みのり本人が言ってましたから。』

カモ『そうなんですか…。』

白鳥『あれ?驚きませんね…もっとびっくりして、喜んでくれると思ったんですけど』

カモ『まぁ…うん…。』

カモは複雑な気持ちだった。

みのりさんは、自分のことを好きだと言ってくれた。今さら白鳥の口から同じことを告げられたけども、だからと言ってみのりさんと付き合うことが出来るわけではなかった。

白鳥『最初、僕が今の妻と離婚するのを防ぐために、無理矢理言い訳として言ったんじゃないかとも思ったんですよ。だから確かめてみました。』

カモ『確かめたって?』

白鳥『抱きしめてキスしようとしたら殴られましたwww』

カモ『ちょっ…(この人早く博多湾にアサリと一緒に埋めないと)』

白鳥『カモ先生のことが好きなんだと思いますよ、あれは本気で。』

お刺身が美味しい。ビールが無くなったから二人分のビールを注文した。

料理が次々と運ばれてくる。

カモ『この前、告白しました。』

情報を出し惜しみしてもしょうがないと思い、単刀直入に言った。

白鳥『そうなんですか。それで?』

白鳥は驚かない。キラキラした目で刺身を愛でている。

カモ『カモ先生のことは好きだけど、付き合うことは出来ないって…。自分にはそれがわからなくて…』

白鳥『そうですか、僕にはわかりますけどね。恐らく…ですけども』

カモ『っ!?』

白鳥『カモ先生も気づいているはずですよ、だからそれを僕に聞きに来た、そうでしょ?』

カモ『相変わらず話しが早いですね』

白鳥『まどろっこしいのは仕事の時だけで十分です』

カモ『確かにwww』

白鳥はまっすぐとした目でカモを見つめていた。

白鳥『XX水産って知っていますか?』

カモ『いえ、聞いたことないです』

白鳥『昔は人を何十人も雇っていた水産加工の会社だったんですけどね、燃料代とか人件費が上がったのと、輸入品との価格競争に巻き込まれて経営が徐々に悪化した会社があったんです。』

白鳥は何かを思い出すようにゆっくりと話し始めた。

白鳥『みのりが高校三年生の時に、会社の経営がいよいよどうにもならなくなって、自己破産して。』

カモ『もしかして、みのりさんの実家ですか?』

白鳥『そうだよ、実家が経営してた会社がそのXX水産だったんだ。海外からの輸入品に押されて利益が減って、みのりさんの両親の代の時に特に経営が悪化して、倒産したんだよ。』

カモ『そうだったんですか…。』

白鳥『みのりは後を引き継ぐつもりで、よく手伝いとかもしていたんですけどね…。事務の仕事とかも手伝ってたみたいだし。だけど会社が倒産して、会社も家も売らなくちゃいけなくなってね。会社の敷地内に自宅があったんですけど、出て行かなくちゃいけなくなって…。それで近くの賃貸アパートに引っ越したんですよ。』

カモ『それは辛いですね…。』

白鳥『本当に辛いのはそこからですよ…。父親が出稼ぎに行って、母親もパートをして何とか生計を立てたたらしいけど。あ、カモ先生、日本酒行けますよね?』

カモがうなずくと、白鳥は日本酒を注文した。

白鳥『しばらくは父親からの仕送りもあったみたいなんですけど…みのりが大学在学中に父親から連絡が来なくなって…。』

カモ『え…音信不通ですか…何かあったんですか?』

白鳥『わかりません、ただ今も連絡はないそうです。』

カモ『それは…なんて言ったらいいのか…。』

白鳥『それでますます生活が苦しくなったので、みのり母は夜のお仕事も始めてみのりの学費とか生活費を稼いでいたそうです。みのりもアルバイトを増やして頑張ってたみたいなんです。』

カモ『そうなんですか、てっきりサークル活動とかでリア充していたのかと思いました。』

白鳥『そんな余裕はなかったと思うよ。奨学金はあったとは言え、生活費もかかるしね…。』

白鳥『そのままみのりは、奨学金を使いながら大学に進学してね。バイトをしながら必死に卒業したそうだよ。僕はその時、県外の大学に行ってたから詳しい所まではわからないけど…。』

カモ『大学生時代、ずっと苦労してたんですね。』

白鳥『小さい会社だったけど、社長令嬢として育ってきてただろうしね。貧困という苦労はみのりにとって地獄だったんじゃないかな…。』

白鳥『でも…みのりは強かった。』

白鳥は日本酒を飲みながら、酒蒸しされたアサリを箸で弄んでいた。

白鳥『ここからが本題だよ、かもねぎ先生…。』

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